新人研修の資料をAIで作る手順|下書きの頼み方と指示文の文例

新人研修の資料は、AIにゼロから作らせるものではありません。 人が材料を渡し、AIが下書きを作り、人が自社の内容を入れて点検する。この分担です。 この分担で、資料づくりは1回分で約17時間から約9.3時間になる計算です(後述の試算)。 空くのは約7.7時間。自社のルールと数字を書き入れる部分は、人の仕事のまま残ります。
新人研修の資料は、AIにどこまで下書きさせられるのか
新人研修の資料は、毎年ほぼ同じ形の仕事です。まっさらから作ると時間がかかります。
AIが得意なのは、次の3つです。
- 研修の科目と、各科目の目的の洗い出し
- 各科目の説明文と、たとえ話の下書き
- 確認テストや、ふりかえりシートの下書き
AIに向かないのは、次の3つです。
- 自社の就業ルール、給与、休日、連絡先を正しく書くこと
- 自社の方針や、創業の経緯など、社内にしかない話
- 「この内容で新人に教えてよいか」の最終判断
AIが自社について知っているのは、渡された材料の範囲だけです。人が渡さなければ、何も知りません。 知らないまま書かせると、もっともらしい作り話が入ります。ここが、この仕事で一番大事な線です。
資料づくりは何時間減るのか(試算)
研修2日間・5科目・資料約30ページの1セットで試算します。 5科目は、会社の概要、ビジネスマナー、電話とメールの対応、仕事の流れ、情報の取り扱いです。
| 作業 | いまの時間 | AI化後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 科目と到達目標の洗い出し | 60分 | 30分 | 30分減 |
| 各科目の資料の下書き(5科目) | 600分 | 250分 | 350分減 |
| 自社の内容の書き入れ(人が担当) | 120分 | 120分 | 変わらず |
| 確認テスト・ふりかえりシート | 90分 | 30分 | 60分減 |
| 講師の進行メモ・配布用の要点シート | 90分 | 40分 | 50分減 |
| 誤りと古い記述の点検(人が担当) | 60分 | 90分 | 30分増 |
| 合計 | 1,020分(17時間) | 560分(約9.3時間) | 460分(約7.7時間)減 |
試算の前提は次のとおりです。
- 1科目の資料づくりは、現状120分。AIの下書きを使うと50分(自社の内容の書き入れは別枠)
- 担当者は人事・総務の1人。研修の経験は数年ある
- 資料は前年のものを使わず、ゼロから作り直す場合
- 時給は3,000円と仮定すると、1セットで約2.3万円分の時間が空く
数字はいずれも、一般的な業務量からの試算です。実測ではありません。 表のとおり、点検の時間は30分増えます。AIの原稿は、読んで直す手間が新しく生まれるからです。 それでも全体では、約7.7時間が空きます。
年2回(春の新卒と秋の中途)作り直す会社なら、年で約15時間です。 来春の入社に向けて準備するなら、いまの時期から材料をそろえ始めるのが無理のない進め方です。
どの順番でAIに頼めば、使える下書きになるのか
いきなり「新人研修の資料を作って」と頼むと、どこかで見た内容の平均になります。 次の順に、1歩ずつ頼みます。
手順1:材料を先に集める(人・約30分)
自社の情報を、箇条書きで用意します。整っていなくて構いません。
- 新人に、研修が終わった時点でできるようになってほしいこと(3〜5個)
- 就業ルールの要点(始業時間、休み方、遅刻の連絡方法)
- 仕事の流れ(誰から誰へ、何が渡るか)
- 過去の新人がつまずいた点
手順2:科目と到達目標を出させる(AI)
材料を渡し、研修の科目の案と、各科目の「終わったらできること」を出させます。 人は、順番と過不足を直します。ここで方向が決まるので、人が見て決める段階です。
手順3:科目ごとに下書きさせる(AI)
科目を1つずつ頼みます。5科目を一度に頼むと、どれも薄くなります。 新人向けの言葉づかいと、たとえ話を入れるよう指定します。
手順4:自社の内容を人が書き入れる
AIの下書きは、「ここに自社のルールを入れる」という空欄を残させておきます。 人が、社内の原本と見比べながら埋めます。
手順5:点検してから配る
日付・数字・社内用語が、原本と一致しているかを人が見ます。 先輩社員に一度読んでもらうと、新人目線の抜けが見つかります。
新人研修の資料づくりで使える指示文の文例
ここでは3本を示します。角かっこ【 】の部分を、自社の内容に置き換えて使います。 AIに渡す材料には、実在の社員名・顧客名・連絡先を入れません。
文例1:科目と到達目標の洗い出し
何に使うか:研修全体の骨組みを作るときに使います。
あなたは、社員が30人ほどの【業種】の会社で、新人研修の資料を作る担当者を手伝います。
次の材料をもとに、2日間の研修の科目案を5つ出してください。
各科目について、「研修が終わったらできること」を1行ずつ書いてください。
【材料】
・新人にできるようになってほしいこと:【箇条書き】
・仕事の流れ:【箇条書き】
・過去の新人がつまずいた点:【箇条書き】
材料にないことは、推測で書かないでください。足りない情報は、最後に質問として並べてください。
置き換えるのは、業種と、3つの材料です。「推測で書かない」の1文は、消さずに残します。
文例2:科目ごとの資料の下書き
何に使うか:1科目分の説明文とたとえ話を作るときに使います。
「【科目名】」の研修資料の下書きを作ってください。読む人は、入社したばかりの社員です。
専門用語は使わず、使う場合は最初に日常の言葉で言い換えてください。
構成は次の順にしてください。
1. この科目で身につくこと(2行)
2. 説明(1ページ分・見出し付き)
3. 身近なたとえ話(1つ)
4. よくある失敗と、その防ぎ方(3つ)
自社のルールや数字が入る部分は、「【ここに自社の内容を記入】」と書いて空けておいてください。
自社のルールを、あなたが作って書かないでください。
置き換えるのは、科目名です。空欄を残させる指示が、作り話を防ぐ要になります。
文例3:確認テストの下書き
何に使うか:研修の終わりに、理解を確かめるテストを作るときに使います。
次の研修資料の内容だけを材料にして、○×の確認テストを5問作ってください。
資料に書いていない事実や数字を使った問題は、作らないでください。
問題ごとに、答えと、資料のどこに書いてあるかを添えてください。
【研修資料の本文を貼る】
置き換えるのは、貼り付ける本文です。答えの根拠を添えさせると、人が点検しやすくなります。
AIに任せてはいけない部分はどこか
次の部分は、人が書き、人が決めます。
| 部分 | 理由 |
|---|---|
| 就業ルール・給与・休日・手当の説明 | 間違えると、入社後の食い違いや不信につながる |
| 会社の方針や創業の話 | 社内にしかない情報で、AIは知らない |
| 情報の取り扱いのルール | 自社の実際の決まりと違う内容を教えてしまう |
| 法令に関わる説明 | 誤りが許されない。公式の資料で確認する【各自確認:説明に使う法令・制度の最新の内容。所管官庁の公式サイトで確認】 |
| 「この内容を新人に教えてよいか」の判断 | 責任を持つ人が決める |
現場の安全教育や、法令で定められた研修がある会社は、その部分をAIの文章のまま使いません。 AIは構成案とテストの下書きまでにして、内容は担当者が公式の資料で確かめます。
使う前のチェックリストと個人情報の扱い
AIに材料を渡す前に、次を確かめます。
□ 実在の社員名、顧客名、取引先名、連絡先を材料から外した □ 発表前の人事異動や、未公開の売上の数字を材料に入れていない □ 使うAIツールで、入力した内容が学習に使われない設定になっているか確認した(【各自確認:利用中のAIツールが入力を学習に使うか。各ツールの設定画面と公式ヘルプの「データの利用」の項で確認】) □ 自社のルールを書く部分は、空欄で残させる指示を入れた
AIが下書きを返したら、配る前に次を確かめます。
□ 日付・時間・金額・連絡先を、社内の原本と1つずつ見比べた □ 「自社のルール」の部分を、人が書き入れて空欄が残っていない □ 自社に無い制度や部署の名前が、混ざっていない □ 先輩社員が一度読み、新人の目線で分からない言葉を洗い出した
1つでも□が埋まらなければ、その資料は配りません。
よくある質問
AIで作ると、他社と同じような資料になりませんか。
材料を渡さずに頼むと、平均的な内容になります。自社の仕事の流れ、過去の新人のつまずき、先輩の失敗談を材料に入れると、自社の資料になります。 下書きの段階では似ていても、自社の内容を人が書き入れる工程で差が出ます。
製造や建設の現場の安全教育の資料も、AIに任せてよいですか。
構成案と確認テストの下書きまでは任せられます。保護具の使い方、作業の手順、数字の基準は、人が公式の資料と社内の手順書で確かめて書きます。 労働安全衛生法第59条は、労働者を雇い入れたときの安全衛生教育を、事業者に義務づけています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の安全衛生教育の解説による。教育項目は労働安全衛生規則第35条)。 教えなければならない内容が法令で決まっている場合は、その項目を公式の資料で確認します【各自確認:自社の業種で法令上必要な教育の項目。厚生労働省の公式サイトで確認】。
飲食や小売の接客研修で使う、ロールプレイの台本はAIで作れますか。
作れます。お客様の役と店員の役のやりとりを、「よくある場面」「困った場面」に分けて頼むと使いやすい台本が出ます。 ただし、自社の接客の決まり(お詫びの言葉、返金の可否)は、人が台本に書き入れます。AIに決めさせません。
入社日まで時間がないとき、どこから頼めばよいですか。
確認テストと、講師の進行メモから頼みます。この2つは、資料の本文が固まっていれば短時間で作れます。 本文は、全科目を作らず、初日の科目だけを先に仕上げる進め方が現実的です。
無料のAIツールで作っても問題ありませんか。
材料に個人情報や未公開の情報を入れない限り、下書きづくりに使えます。 入力した内容が学習に使われるかどうかは、ツールごとに違います。使う前に設定画面と規約を確認してください【各自確認:利用中のAIツールが入力を学習に使うか。各ツールの規約と設定画面で確認】。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. 自社の就業ルールや社内の連絡先は、AIが知らないので人が自分で書き入れる。
○ — AIは自社の情報を持っていないため、社内固有の部分は人が入れると本文で述べている。
Q2. 下書きをAIに任せれば、人が資料を点検する時間はなくなる。
× — 試算では、AIの原稿を点検する時間は現状より増えると本文で述べている。
Q3. 研修資料の下書きを作らせるときは、実在の社員名や顧客名を入れて具体的にするのがよい。
× — 実名は入力せず、「先輩社員」「お客様」などの置き換えで書くと本文で述べている。
御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。
いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)
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