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36協定・労働時間の異常値を一次チェックする方法

結論

36協定の上限チェックは、従業員50人の会社で月約11時間かかる仕事です。 数字の突き合わせを表計算ソフトに、確認文の下書きをAIに任せると、月約3.5時間になる計算です(後述の試算)。 任せられないのは、超過の原因の判断、36協定そのものの内容、是正の指示です。 AIの役目は、上限に近づいた人を早く見つけて、人が動くまでの手間を減らすことです。

一次チェックとは何か。AIには何を任せてよいのか

一次チェックとは、社労士や労働基準監督署に相談する前に、社内で「普段と違う数字」を見つける作業です。 36協定とは、法律の上限を超えて残業や休日出勤をさせるために、会社と従業員側が結ぶ取り決めです。

一次チェックの中身は、次の3つに分けられます。

  • 勤怠の数字を集めて、1人ずつの残業時間を出す
  • 出した数字を、法律と自社の36協定の上限に当てる
  • 上限に近い人がいたら、本人や上司に確認する

このうち、AIに向くのは3つ目の文面づくりと、表計算ソフトの式づくりの手伝いです。 1つ目と2つ目の計算は、AIに任せません。AIは、計算を間違えても自信のある文章で返してくるからです。 計算は表計算ソフトの式で固定し、AIは「式を作る」「文面を書く」側に回します。

見るべき上限は、いくつあるのか

残業の上限は、特別な取り決めがあるかどうかで変わります。 特別条項とは、繁忙期など臨時の事情があるときだけ、原則の上限を超えられる取り決めです。

区分 見る数字 数える対象
原則 月45時間、年360時間 時間外労働
特別条項がある場合 年720時間以内 時間外労働
特別条項がある場合 単月で100時間未満 時間外労働と休日労働の合計
特別条項がある場合 2〜6か月のどの平均も月80時間以内 時間外労働と休日労働の合計
特別条項がある場合 月45時間を超えられるのは年6か月まで 時間外労働

上の表の数字は、労働基準法36条にもとづく厚生労働省「時間外労働の上限規制」のページ(hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html)に載っている上限です。 同ページでは、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は休日労働を含むと示されています。 施行は大企業が2019年4月、中小企業が2020年4月です。

【各自確認:1年単位の変形労働時間制など、労働時間の決め方が特殊な会社や、建設業・自動車運転・医師など上限が別に定められた業種は、数字が変わる。厚生労働省の上記ページで自社の区分を確認】

注意点が2つあります。

  • 数える対象が行ごとに違います。休日労働を足すのは、表の3行目と4行目です
  • 上の数字は法律の上限です。自社の36協定に書いた上限が、これより低いことがあります

チェックに使うのは、自社の36協定の数字です。法律の数字だけで見ると、協定の上限を先に超えてしまいます。 協定を結んで届け出ていない会社、有効期間が切れている会社は、上限の前にそこから直す必要があります【各自確認:協定の届出の状態は、管轄の労働基準監督署または社労士に確認】。

月にどれだけ時間が減るのか。従業員50人の会社の試算

一般的な業務量から、月次で勤怠を確認する会社を想定して試算します。

作業(月1回) いまの時間 AI化後 差
勤怠データの取り込みと整形 1.5時間 0.5時間 1.0時間
1人ずつの時間外・休日労働の集計と上限との突き合わせ 4.0時間 1.0時間 3.0時間
2〜6か月平均の確認 2.0時間 0.5時間 1.5時間
該当者の上司・本人への確認連絡 2.0時間 1.0時間 1.0時間
社労士への相談メモと月次報告の作成 1.5時間 0.5時間 1.0時間
合計 11.0時間 3.5時間 7.5時間

試算の前提は次のとおりです。これは公開された調査の数字ではなく、このサイトでの目安です。

  • 従業員は50人。勤怠は毎月CSVで書き出せる
  • いまは、勤怠システムの画面や表計算ソフトを見ながら、人事担当者が1人ずつ手で確認している
  • AI化後は、上限の突き合わせを表計算ソフトの式で自動にし、文面の下書きだけAIに任せる
  • 時給は2,500円で換算する(自社の人件費に置き換える)

7.5時間は、時給2,500円で月約1万9,000円、年で約22万円の計算です。 表の準備には、最初の1回だけ約4時間かかる見込みです。回収は2か月以内です。 自社の数字は、先月の作業時間を1回計ってから置き換えてください。

表計算ソフトに警告の線を入れる手順

AIに任せる前に、警告の線を表計算ソフトの式で固定します。手順は次のとおりです。

  1. 自社の36協定を開き、月・年・特別条項の上限を書き出す
  2. 勤怠システムから、月別の時間外労働と休日労働をCSVで出す
  3. 氏名を社員番号に置き換える(AIに渡す前の必須作業)
  4. 表計算ソフトに、色を変える式を入れる(式づくりはAIに手伝わせてよい)
  5. 手計算できる3人分で、式の結果と合っているかを確かめる
  6. 毎月、警告が出た人だけを人が見る

警告の線は、上限ぴったりにしません。手前に段階をつけます。

段階 線の置き方の例 意味
黄 月45時間の8割(36時間) 今月の残り日数を見て、上司に伝える
橙 月45時間を超えた 年に何か月超えたかを数える
赤 単月で80時間、または2〜6か月平均で80時間 本人と上司に確認し、社労士に相談する

線の置き方は一例です。自社の協定に合わせて決めてください。 5の検算は省きません。式が1行間違っていると、間違ったまま毎月動き続けるからです。

AIへの指示文の文例(3本)

3本とも、氏名は入れず、社員番号(例:A001)で書きます。

文例1:警告を出す式を作る

表計算ソフトの式づくりに使います。

表計算ソフトで、従業員ごとの時間外労働を管理する表を作っています。
シート「時間外」には、A列に社員番号、B列からM列に4月から3月までの月ごとの時間外労働(時間単位)が入っています。
次の警告を出す式を、Excelの関数で書いてください。
・その月が◯時間(協定の月の上限の8割)を超えたら「黄」
・その月が◯時間(協定の月の上限)を超えたら「橙」
・橙になった月の数が、年間で◯回(協定の回数の上限)に達したら「赤」
式だけでなく、各式が何をしているかを1行ずつ説明してください。

◯を自社の協定の数字に置き換えます。返ってきた式は、手順5の検算を通してから使います。

文例2:上司への確認文の下書き

警告が出た人の上司に送る文面に使います。

次の内容で、部署の上司宛ての確認メールを書いてください。丁寧で短い文面にします。
・対象:社員番号◯◯◯(氏名は入れない)
・状況:今月の時間外労働が◯時間で、協定の月の上限まであと◯時間です
・聞きたいこと:今月の残りの業務の見通しと、人員や業務の調整が必要か
・返信の期限:◯月◯日
責める言い方にはせず、事実と確認事項だけを書いてください。

◯を社員番号・時間・期限に置き換えます。氏名と部署名は、送る直前に人が足します。

文例3:社労士への相談メモの下書き

社労士に相談する前の、状況整理に使います。

社労士への相談メモを、次の材料から整理してください。
・警告が出た人数:◯人(すべて社員番号で表記)
・警告の種類:単月の超過が◯人、2〜6か月平均の超過が◯人
・超過が出た部署と、考えられる理由(人員不足、繁忙期など):◯◯
・すでに社内でとった対応:◯◯
「事実」「社内での見立て」「相談したいこと」の3つの見出しに分け、見立ては推測だと分かる書き方にしてください。

一次チェックで、任せてはいけないこと

次の3つは、AIにも表計算ソフトにも任せません。

  • 超過の原因の判断。忙しかったのか、人が足りないのか、打刻が実態とずれているのかは、現場を知る人にしか分かりません
  • 是正の指示。誰にどの業務を減らさせるかは、人事と上司の判断です
  • 労働基準監督署への届出や、社労士とのやり取り

もう1つ、勤怠の数字そのものが正しいかを疑う目も、人が持ちます。 打刻の時間と、実際に働いていた時間は、ずれることがあります。パソコンの起動時刻や入退室の記録と、たまに突き合わせてください。 AIにも表計算ソフトにも、打刻の外にいる実態は見えません。

導入前チェックリスト

始める前に、次を確認してください。

□ 自社の36協定が有効期間内で、届出済みの控えがある □ 協定に書いた月・年・特別条項の上限を、表に書き出した □ 勤怠システムから、月別のCSVを出せる □ 氏名を社員番号に置き換える手順を、担当者が決めた □ 式の検算を、手計算できる3人分で行った □ AIに個人情報を入れない決まりを、担当者に伝えた □ 警告が出た人にだれが連絡するか、社内で決めた

AIには勤怠の生データを渡しません。渡すのは、社員番号と時間だけにそろえた表までです。 AIツールの設定で、入力した内容が学習に使われるかどうかを確認してください【各自確認:使うAIツールのデータの取り扱いの説明ページで、2026年9月時点の設定を確認】。

よくある質問

Q. 管理職の労働時間も、この一次チェックに入れますか。

管理職の扱いは、肩書きではなく実態で決まります。 労働基準法の管理監督者にあたるかどうかで、時間外労働の上限規制の扱いが変わります【各自確認:管理監督者の範囲と労働時間の把握の要否は、管轄の労働基準監督署または社労士に確認】。 名ばかり管理職の可能性がある人は、いったん一次チェックの表に入れて見ておくと安全です。

Q. 勤怠システムに警告機能があります。それでもこの方法は要りますか。

警告機能が自社の36協定の数字で設定されているなら、突き合わせの表は要りません。 その場合に残るのは、警告が出た後の連絡文と、社労士への相談メモの下書きです。 まず、システムの警告が、月・年・2〜6か月平均のどこまで見ているかを確認してください。

Q. 36協定を結んだかどうか、記憶が曖昧です。どこで確認しますか。

届出をしたときの控え(受付印のあるもの、または電子申請の到達記録)で確認します。 控えが見つからない場合は、管轄の労働基準監督署か社労士に問い合わせてください。 確認できるまで、残業をさせる前提のチェックは始めないでください。

Q. 打刻が実態より少ないかもしれません。AIで見つけられますか。

見つけられません。AIが見るのは、渡された打刻の数字だけです。 パソコンの利用記録や、入退室の記録との突き合わせは、人が抜き取りで行います。 打刻の外にいる実態を数字にする作業は、一次チェックの前提として別に必要です。

Q. 無料のAIに、勤怠データを入れてもよいですか。

氏名などの個人が特定できる情報は入れません。社員番号と時間だけにそろえた表までにしてください。 無料版は、入力した内容が学習に使われる設定になっている場合があります【各自確認:使うAIツールの設定画面と利用規約で確認】。 迷うときは、式づくりと文面づくりに使い、勤怠の数字そのものは表計算ソフトの中だけで扱います。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 月の残業時間の合計は、AIに暗算させず、表計算ソフトの式で出す。

○ — 数字の計算はAIに任せず、表計算ソフトの式で行うと本文で述べている。

Q2. AIが「問題なし」と返せば、上限を超えていないと確定してよい。

× — AIの返答は確定の根拠にならず、警告が出た人と出なかった人の両方を人が抜き取りで確かめると本文で述べている。

Q3. 勤怠データをAIに渡すときは、氏名を社員番号に置き換えてから渡す。

○ — 個人が特定できる情報は入れず、社員番号に置き換えて渡すと本文で述べている。

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御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。

いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。