中途採用のリファレンスチェック記録をAIで整理する

中途採用のリファレンスチェックで時間がかかっているのは、推薦者に話を聞く時間 そのものより、聞いた内容を記録し、候補者ごと・推薦者ごとに見比べる作業です。 質問項目の下書き、依頼文の作成、ヒアリング内容の整理と比較はAIに任せられます。 一方で、推薦者との会話そのもの、記録から採用可否を決める判断は、引き続き 人が担う必要があります。この記事では、どこまでを仕組みに任せられるかを 工程ごとに分け、時間の目安と記録整理の手順を示します。
リファレンスチェック、AIにどこまで任せられるのか
リファレンスチェックは「準備する」「聞く」「まとめる」「判断する」の 4段階に分けられます。このうちAIに向くのは、質問項目の下書きや、 聞いた内容を決まった形式に整理する部分です。
| 工程 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 質問項目のたたき台作成 | 職種・役職に応じた確認項目の下書きを作る | AI |
| 推薦者への依頼文作成 | 日程調整・趣旨説明のメール文案を作る | AI |
| ヒアリングの実施 | 推薦者に電話・オンラインで直接話を聞く | 人 |
| ヒアリング内容の記録整理 | メモや文字起こしを質問項目ごとに整える | AI |
| 複数推薦者の記録比較 | 候補者1人につき複数の推薦者の回答を並べて要約する | AI |
| 採用可否の判断 | 記録・面接内容・本人の意向を踏まえて決める | 人 |
AIが作るのは質問項目の下書きと整理済みの記録表までで、 実際に誰にどう聞くか、聞いた内容をどう評価するかは 採用担当者の判断が要ります。
いまの時間とAI化後の目安
一般的な業務量から試算すると、候補者1人あたり推薦者2名に ヒアリングする場合の所要時間はおおむね次のとおりです。
| 業務 | いまの時間 | AI化後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 質問項目の準備 | 30分 | 10分 | 20分 |
| 推薦者への依頼文作成・日程調整 | 20分 | 5分 | 15分 |
| ヒアリングの実施(推薦者2名分) | 60分 | 60分 | 0分 |
| ヒアリング記録の文字起こし・整理 | 40分 | 10分 | 30分 |
| 複数推薦者の記録比較・要約 | 30分 | 10分 | 20分 |
| 採用可否検討のための資料まとめ | 20分 | 10分 | 10分 |
| 合計 | 200分 | 105分 | 95分 |
試算の前提(一般的な業務量からの目安。実際の時間は候補者数・ 推薦者数・ヒアリングの深さで変わります)
- 候補者1人につき推薦者2名にヒアリングする運用と仮定
- ヒアリングはオンライン通話または電話で、担当者がメモを取りながら実施すると仮定
- AI化後の時間には、AIが作った記録を担当者が読んで内容を確認する時間を含む
- 推薦者との日程調整のやり取り(往復メール)の時間は含まない
ヒアリング記録を整理する仕組み
リファレンスチェックの記録整理は、次の3ステップに分けられます。
- ヒアリング中のメモまたは録音の文字起こしを用意する
- 質問項目ごとに発言を並べ替え、要点だけを抜き出す
- 候補者1人につき複数の推薦者の回答を、項目ごとに並べた比較表にする
この作業を手作業で行うと、推薦者ごとにメモの形式がばらつき、 後から見比べるのに時間がかかります。あらかじめ質問項目を 固定しておき、AIに整理させる形にすると、比較表を作る手間が減ります。
推薦者の発言をそのまま記録に残すか、要約して残すかは、 社内の採用記録の運用ルールに合わせて決める必要があります (要約すると発言の細かいニュアンスが失われる場合があります)。
AIへの指示文の文例
ヒアリング記録を整理する際にAIへ渡す指示文の例です。 文字起こし済みのメモを貼り付けて使います。
以下は、中途採用候補者「[候補者名]」について、
推薦者「[推薦者名・候補者との関係]」にヒアリングした
記録のメモです。
このメモを、次の質問項目ごとに整理してください。
1. 在籍期間・役職・担当業務
2. 業務上の強み
3. 業務上の課題・改善点
4. チームでの協調性
5. 再び一緒に働きたいと思うか
各項目について、メモの中から該当する発言を要約し、
箇条書きで示してください。メモに記載がない項目は
「言及なし」としてください。推測で内容を補わないでください。
---
[ここにヒアリングのメモ・文字起こしを貼り付ける]
[候補者名] [推薦者名・候補者との関係] の部分を、
実際のヒアリング内容に置き換えて使います。
出力後は、要約が元のメモの内容とずれていないか、
担当者が必ず読み合わせてください。
導入前チェックリスト
リファレンスチェックの記録にAIを使う前に、次を確認します。
- □ 推薦者への依頼文で、聞いた内容を記録・整理する目的を伝えているか
- □ ヒアリングのメモや録音をAIツールに入力する前に、無料版の学習利用設定をオフにしているか
- □ 候補者・推薦者の氏名など個人情報を入力する範囲を、社内で決めているか
- □ 整理した記録の保管期間・削除のタイミングを決めているか
個人情報を扱う際の注意
リファレンスチェックの記録には、候補者と推薦者双方の個人情報が 含まれます。AIツールに入力する前提として、次を確認しておく必要があります。
- 候補者本人からリファレンスチェックの実施について同意を得ているか
- 推薦者に、話した内容が採用選考の記録として残ることを伝えているか
- 使用するAIツールが、入力内容を学習に使わない設定にできるか(ツールごとに設定は異なります)
採用選考での個人情報の取り扱いには、守るべきルールがあります。
- 職業安定法5条の5:募集を行う企業は、求職者の個人情報を業務の目的の範囲で、 目的を明らかにして収集・保管・使用します。本人の同意がある場合などは例外です。 具体的な運用は厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号。最終改正は令和4年厚生労働省告示第143号)に定められています (出典:厚生労働省・新潟ハローワークの掲載ページ、厚生労働省「雇用保険法等の一部改正に伴う職業安定法関係の通知」令和4年7月19日職発0719第19号。2026年10月時点で令和4年より新しい改正は確認できていません)
- 厚生労働省は、本籍・生活状況・家族の職業など、応募者の適性や能力と関係のない 事柄を調べる身元調査を行わず、応募者の適性・能力によってのみ採否を決めるよう求めています (出典:厚生労働省・新潟ハローワーク「身元調査について」)。 リファレンスチェックでも、聞く項目は仕事の適性・能力に関わるものに絞ります
【各自確認:自社が使うAIツールの、入力内容を学習に使わない設定の有無と手順は、そのツールの公式ヘルプで確認】
よくある質問
リファレンスチェックのヒアリング記録を文字起こしする作業はAIに任せられますか
録音やメモから文字起こしし、質問項目ごとに整理する作業はAIに向いています。 ただし、聞き取りにくい発言や方言・略語の誤変換がないか、 担当者が確認する必要があります。
推薦者への依頼文もAIに書かせてよいですか
日程調整や趣旨説明の下書きはAIに任せられます。 ただし、推薦者との関係性(前職の上司か同僚かなど)に応じて 言い回しを調整する部分は、担当者が見直す必要があります。
採用の可否をAIに判断させてよいですか
任せられません。リファレンスチェックの記録は判断材料の1つであり、 面接内容や候補者本人の意向と合わせて、採用担当者が最終判断します。
リファレンスチェックはどのタイミングで実施するのが一般的ですか 内定の前に行うか後に行うかは、会社ごとに決めます。どちらの場合も、候補者本人の同意を得てから行います。
候補者の同意なくリファレンスチェックを実施してもよいですか
候補者本人への事前の同意説明を、このサイトでは必須の手順として勧めます。 無断で前職の関係者に問い合わせることは、トラブルの原因になります。 実施前に候補者へ目的と対象者を伝え、同意を得る手順を踏んでください。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. 推薦者へのヒアリングそのもの(実際の会話)は、AIに任せてよい。
× — 相手の言葉の微妙なニュアンスを汲み取り、追加で聞き返す判断が要るため、ヒアリングの実施は人が担う(本文参照)。
Q2. 複数の推薦者から得た記録を突き合わせて比較表にまとめる作業は、AIに任せやすい。
○ — 決まった質問項目に沿った記録を並べ替え・要約する作業はAIに向く(本文参照)。
Q3. リファレンスチェックの結果だけを根拠に、採用の可否を機械的に決めてよい。
× — 結果はあくまで判断材料の1つであり、面接内容や本人の意向と合わせて人が最終判断する(本文参照)。
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