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人事評価コメントの下書きをAIに任せる範囲

結論

人事評価コメントの下書きは、評価そのものを下す作業ではありません。任せられるのは、 目標達成度や行動評価の点数・実績メモをもとにした文章の下書き作成と、評価者ごとに ばらつく言い回しをそろえるチェックです。評価点や評語の最終決定、昇給・昇格の判断、 人物の性格に踏み込む表現の可否は、引き続き評価者と人事担当が行います。一般的な 業務量から試算すると、評価者5人・部下30人の会社で、半期評価1回あたり7.5時間前後、 年間では15時間前後の削減余地になる計算です(後述の試算。評価者1人あたりでは 半期1.5時間、年間3時間)。

人事評価コメントの作成は、何にいちばん時間を使っているか

評価者(課長・部長クラス)が最も時間を使うのは、白紙の欄に文章を組み立てる作業です。 目標達成度のデータや行動評価の点数はすでに手元にあっても、それを評語として文章に する段階で毎回言葉選びに悩みます。部下が5〜6人いる評価者なら、この作業を人数分 繰り返すことになります。

さらに、評価者によって文章の丁寧さや厳しさにばらつきが出やすい点も、人事担当の 確認作業を重くしています。表現がきつすぎる、逆に曖昧すぎるといったコメントを 見つけて評価者に書き直しを依頼する作業も、毎回の評価期間で発生します。

評価者の立場からすると、部下ごとに評価理由が違うため、テンプレートをそのまま 使い回すこともできません。人事担当にとっても、全評価者分のコメントに 一通り目を通し、表現の水準をそろえる作業は、評価期間のたびに発生する負担です。

試算:評価コメントの下書きで何時間減るのか

業務 いまの時間 AI下書き後 差
コメント作成(部下1人あたり) 25分 10分 15分
評価者1人・部下6人分 150分(2.5時間) 60分(1時間) 90分(1.5時間)
評価者5人・部下30人分(半期1回) 750分(12.5時間) 300分(5時間) 450分(7.5時間)
年間(半期評価を2回実施) 25時間 10時間 15時間

試算の前提は次のとおりです。評価者は課長クラス5名、1人あたり部下6名(計30名)を 担当し、半期ごとに評価を実施する従業員35名前後の会社を想定しています。評価者1人 あたりの削減は、半期で1.5時間、年間で3時間です。

コメント作成にかかる25分と、AI下書き後の10分は、このサイトが置いた仮定です。 目標達成度・行動評価の欄それぞれに数行の文章を書く場面を想定しました。公的機関の 統計から出した数字ではありません。評価項目の数や求められる文字量によって、実際の 時間は変わります。自社の評価者に1人分の時間を測ってもらい、置き換えて使ってください。

AI下書き後の10分には、点数と実績メモを入力する時間、下書きを読んで事実確認と 表現の修正を行う時間の両方を含んでいます。ゼロから文章を組み立てる時間がなくなる 分だけ、差が生まれる計算です。

AIに下書きを書かせるときに使う指示文の例

評価コメントの下書きを頼むときは、点数と実績メモだけを渡し、氏名は入力しないのが 基本です。以下の指示文をベースに、自社の評価項目に合わせて書き換えて使ってください。

あなたは人事評価のコメント下書き作成を手伝うアシスタントです。
以下の目標達成度と行動評価の点数、具体的な実績メモをもとに、
人事評価シートの「総合コメント」欄の下書きを300字程度で作成してください。

【評価期間】2026年上期
【目標達成度】目標:◯◯ 実績:◯◯ 達成率:◯◯%
【行動評価】規律性:◯ 協調性:◯ 積極性:◯(5段階評価)
【具体的な実績メモ】
・◯◯
・◯◯

条件:
・断定的な人物評価(「怠慢である」等)は書かない
・事実(達成率・実績メモ)に基づいた記述にとどめる
・最後に「今後期待すること」を1文加える

「◯◯」の部分を、自社の評価項目と実際の数字・実績メモに置き換えて使います。 氏名や社員番号は入力せず、対象者が分からない状態でAIに渡すのが安全です。

AIに任せてはいけない判断

  • 評価点・評語(S・A・B・Cなど)の最終決定
  • 昇給・昇格・昇進に関わる判断
  • 人物の性格や態度についての断定的な表現を使うかどうかの判断
  • ハラスメントや差別につながりうる表現の最終チェック
  • 評価結果を本人に伝える面談そのもの

これらは、AIが作った下書きを見たあとも、評価者と人事担当が自分で確認する 範囲です。下書きが用意されていても、確認の手間そのものはなくなりません。

特に人物評価に関わる表現は、書き方ひとつで従業員との関係やトラブルの種になり ます。AIが提案した文章に断定的な言い回しが含まれていないか、評価者自身が 読み直す工程は、下書きを使う場合でも省略できません。

個人情報を入力するときの注意点(チェックリスト)

人事評価コメントは、氏名・評価点・処遇に関わる情報を扱う業務です。AIツールに 渡す前に、次の3点を確認してください。

  • □ 氏名・社員番号など個人が特定される情報を、無料版のAIツールにそのまま 入力していないか
  • □ 評価点や賞与額など機微な数字を入力する前に、法人向け・社内利用向けの 契約プランに切り替えているか
  • □ AIが作った下書きを、評価者本人が事実確認してから使っているか

法律の面では、個人情報保護委員会が2023年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する 注意喚起等」(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/)で、 個人情報取扱事業者向けに次の点を示しています。あらかじめ本人の同意を得ることなく 生成AIサービスに個人データを含む指示文を入力し、その個人データが応答結果の出力以外の 目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があります。 そのため入力する前に、サービスを提供する事業者が個人データを機械学習に利用しない ことなどを十分に確認するよう求めています。

ツールの設定の面では、OpenAIのヘルプセンターに次の説明があります(2026年9月時点で 確認。「How your data is used to improve model performance」ほか、 https://help.openai.com/ 内の記事)。ChatGPTのFree・Plus・Proの個人利用は、 初期設定でデータ共有が有効です。設定の「Data Controls」にある「Improve the model for everyone」(日本語表示では「すべての人のためにモデルを改善する」)をオフにすると、 以後の会話は学習に使われません。ChatGPT Business・Enterprise・Eduの入力と出力は、 初期設定では学習に使われません。

他社ツールも、法人向けプランは学習に使わない扱いが公式ページで確認できました (2026年9月時点)。Claudeの Team・Enterprise は、入力と出力を初期設定では学習に 使いません(Anthropic Privacy Center)。Microsoft 365 Copilot Chat は、エンタープライズ データ保護のもとで、指示文と応答を基盤モデルの学習に使わないとされています (Microsoft Learn)。Google Workspace の Gemini は、内容が組織のドメイン外のモデル 学習には使われないとされています(Google Workspace ヘルプ)。一方、無料の個人向け版は 提供元ごとに扱いが違います【各自確認:利用している無料版AIツール(Claude Free・Pro・Max、 Gemini アプリ、Copilot 無料版など)が入力内容を学習に使う設定になっているか。各ツール 公式ヘルプの「データの利用」「プライバシー」に関する項目で確認】。導入前に、使う ツールの提供元の公式ページで確認してください。

導入の手順

  1. 目標達成度・行動評価などの評価項目をテンプレート化する
  2. AIに渡すデータの範囲を決める(氏名は入力せず、点数と実績メモのみにする)
  3. 指示文(プロンプト)を1つ作り、評価者全員で同じ形式を使う
  4. 人事担当が下書きを1回サンプルチェックし、表現の基準をすり合わせる
  5. 本運用に入れる。最初の1回転は、全件を評価者が確認してから提出する

よくある質問

Q. 人事評価コメントの下書きをAIに任せると、評価の公平性は保てますか。

評価の公平性そのものは、最終判断を行う評価者と人事担当が担います。AIが担うのは 表現のばらつきを減らす部分までで、公平性の判断はAIに移りません。

Q. 評価コメントに部下の氏名を入力しても問題ないですか。

避けるべきです。氏名は個人データに当たる場合があり、個人情報保護委員会の 注意喚起(2023年6月2日)の対象になります。氏名も社員番号も入れず、「Aさん」の ような記号に置き換えて、対象者が分からない状態でデータを渡す方法が安全です。

Q. 従業員10名程度の小規模な会社でも導入する意味はありますか。

評価者が1〜2名の会社では、効果は限定的です。表現の統一に手間がかかるのは、 評価者が複数いて部下の人数が多い会社のため、規模が小さいほど削減余地は小さく なります。

Q. AIが書いたコメントを、そのまま人事評価シートに使ってよいですか。

下書きとして使い、実績データとの事実確認、表現の最終確認を評価者が行ってから 提出します。確認を省略する使い方は想定していません。

Q. 人事評価コメントの作成に、どのAIツールを使えばよいですか。

【各自確認:自社ですでに契約している生成AIツール(Claude・ChatGPT・Gemini・Copilot等)の 料金プランと個人情報の取り扱い方針。各ツールの公式サイトの料金ページとプライバシー ポリシーで確認】


概算できます。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 人事評価コメントの下書きをAIに作らせても、評価点や評語の最終決定はAIが行ってよい。

× — 評価点・評語の最終決定は評価者が行うと本文で述べた。

Q2. 目標達成度や行動評価の点数をもとに、コメントの下書き文章を作る作業はAIに任せやすい。

○ — データをもとにした下書き作成はAIに向いていると本文で説明した。

Q3. 部下の氏名をそのまま無料版のAIツールに入力してコメントを作成してよい。

× — 個人が特定される情報は無料版AIツールへの直接入力を避けるべきだと本文で述べた。

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いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。