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総務

実地棚卸の集計・報告をAIで楽にする

結論

実地棚卸は、数える作業そのものより、数えた後の集計と差異の説明に時間がかかる業務です。 一般的な業務量から試算すると、店舗・倉庫1拠点あたり棚卸1回で担当者1人あたり7〜8時間ほどの作業が浮く計算になります(後述の試算)。 AIに任せられるのは「カウント結果の集計」「理論在庫との差異照合」「差異一覧・報告書の下書き作成」の3つです。 現物を数える作業自体や、差異の原因特定、廃棄・評価損の会計処理は人が担います。 「棚卸実査」と呼ぶ会社もありますが、指している内容は同じで、現物確認とその後の集計・照合を指します。 棚卸実査でAIが役立つのは、現物を数えた後の「集計」「帳簿との突き合わせ」「差異一覧と報告書の下書き」です。 スマホで撮った写真から数える画像認識の道具もありますが、その数え方で監査人が納得するかは、事前に相談して決めます。 AIが出した結果は、人が確認・承認した記録とセットで残します。手順と書類は「棚卸実査の手順」の節にまとめました。

実地棚卸の集計・報告は、何にどれだけ時間がかかっているのか

実地棚卸の作業は、大きく2つの工程に分かれます。

  • 現物を数える工程(カウントシート・ハンディ端末などを使って、実際の在庫数を数える)
  • 数えた後の工程(集計、理論在庫との照合、差異の原因確認、報告書作成)

現物を数える工程は、店舗や倉庫の規模、SKU数によって時間が決まっており、AIで大きく変わる部分ではありません。 時間がかかりやすいのは後半の工程です。カウント結果を表計算ソフトに転記し、理論在庫のデータと突き合わせ、 差異が出た商品を洗い出し、上司や本部への報告書をまとめる。この一連の作業は、店舗数やSKU数が多いほど積み上がります。

どの作業をAIに任せられるのか

AIに向いているのは「決まったルールで数字を照合し、まとめる」作業です。

  • カウントシート・ハンディ端末から出力した実地カウント数の集計
  • 理論在庫(在庫管理システム上の数量)と実地カウント数の差異照合
  • 差異が一定以上の商品の一覧化(金額換算を含む)
  • 前回・前年同時期の棚卸結果との比較集計
  • 棚卸結果報告書の下書き作成(差異件数・差異金額・傾向のまとめ)

これらは「入力されたデータを、決まった計算式で処理する」作業です。 数える工程そのものではなく、数え終わったデータをどう整理するかにAIを充てる形になります。

AIに任せてはいけない判断は何か

次の作業・判断は、必ず人が行います。

  • 現物を実際に数える作業そのもの(数え方の設計・立ち会いを含む)
  • 差異が出た商品について、原因が盗難・破損・記録漏れ・入出庫の計上ミスのどれにあたるかの特定
  • 棚卸差異を会計上どう処理するか(棚卸減耗費・評価損として計上するかどうか)
  • 差異が大きい店舗・担当者への確認や指導
  • 棚卸のやり方・頻度そのものの見直し

AIは「理論在庫と実地カウント数が合っていない」ところまでは見つけられますが、 なぜ合っていないのか、どう処理するのかは、現場の事情を知っている人が判断します。

棚卸のスケジュールをどう組むか

棚卸の直前に準備を始めると、当日の混乱や差異確認の遅れにつながります。 実施日から逆算して準備すると、当日と翌日以降の作業がスムーズになります。

時期 やること
実施1週間前まで 対象範囲(全品棚卸か一部か)とカウントシートの様式を確定する
実施2〜3日前まで 理論在庫データを最新の状態にし、AIに読み込ませる準備をする
実施当日 現物を数え、カウント結果を記録する(この工程は人・機器が担当)
実施翌日 カウント結果の集計と理論在庫との照合をAIに任せる形で行う
実施後2〜3日以内 差異が出た商品を一覧化し、原因確認が必要な分だけ人が調べる
実施後1週間以内 棚卸結果報告書の下書きをAIに作らせ、内容を人が確認して提出する

実際にどれくらい時間が減るのか

一般的な業務量から試算すると、棚卸後の集計・報告作業は次のとおりです。

業務 いまの時間 AI化後 差
カウント結果の入力・集計 4.0時間 1.5時間 -2.5時間
理論在庫との差異照合 3.0時間 1.0時間 -2.0時間
差異一覧・原因メモの整理 2.5時間 1.0時間 -1.5時間
棚卸結果報告書の下書き作成 2.0時間 0.5時間 -1.5時間
合計 11.5時間 4.0時間 -7.5時間

前提条件: SKU数500〜1,000点程度の店舗・倉庫1拠点、棚卸担当1〜2名、時給2,500円を想定した、棚卸1回あたりの目安の試算です。 実際の時間はSKU数や棚卸の実施方法(全品棚卸か循環棚卸か)によって変わります。 この試算は特定企業の実測値ではなく、一般的な業務量から見積もったものです。 複数店舗・複数倉庫を持つ会社では、この差が拠点数分だけ積み上がります。

計算例:自社の場合、1回あたりいくら浮くか

上の試算表の数字だけを使って、実際の金額まで出してみます。

  • 前提: 店舗・倉庫1拠点、SKU数500〜1,000点程度、棚卸担当1名、時給2,500円(いずれも上の試算表と同じ前提)
項目 数字
棚卸1回あたりの削減時間(試算表の合計) 7.5時間
時給 2,500円
1回あたりの削減額 7.5時間 × 2,500円 = 18,750円
年4回棚卸する場合の年間削減額 18,750円 × 4回 = 75,000円
店舗を5拠点持つ場合の年間削減額 75,000円 × 5拠点 = 375,000円

「年4回」「5拠点」の部分はここで仮に置いた条件です。自社の棚卸回数・拠点数に置き換えて計算してください。 削減額は担当者の作業時間を時給換算した目安であり、実際に人件費が浮くとは限りません(空いた時間を他の業務に充てる形になります)。

棚卸集計をAIに任せる前のチェックリスト

本文で挙げた内容を、実際に任せる前に確認できる形にまとめました。1つずつ確かめてください。

□ 理論在庫データを、棚卸実施日時点の最新の状態にしてある □ カウントシート・ハンディ端末の出力形式が、店舗・倉庫間で揃っている(バラバラなら先に様式を統一する) □ 差異が出た商品について、原因区分(盗難・破損・記録漏れ・入出庫の計上ミス)を確認する担当者が決まっている □ 棚卸差異の会計処理(棚卸減耗費か評価損か)を最終確認する経理担当者・税理士が決まっている □ 差異が一定以上の商品を人が再確認する基準(金額または点数)を決めてある

すべて埋まっていれば、次の集計・照合からAIに任せる形で始められます。

何から始めればいいか

棚卸のやり方自体を変えずに、集計と照合の部分だけを試すところから始められます。

  1. 直近1〜2回分の棚卸データ(カウント結果・理論在庫・実際に判明した差異)をAIに読ませ、集計結果が一致するか確認する
  2. 一致率に問題がなければ、次回棚卸の差異照合をAIに任せる
  3. 精度に問題がなければ、報告書の下書き作成に広げる
  4. 差異が大きい商品・店舗は、事前にリストアップして人の確認工程に残す

在庫管理システムやPOSシステムには、棚卸データの集計・差異照合機能が搭載されているものがあります。 機能の有無や料金はシステムと契約プランによって異なるため、各社の公式サイトで 最新の情報を確認してください(2026年9月時点)。 棚卸業務を効率化するシステムを新たに導入する場合、導入費用がデジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の 対象になる場合があります。補助率は原則1/2以内(一定の要件を満たす場合は2/3以内)、補助額は5万円以上450万円以下です。 公募回ごとに条件が変わるため、申請前に最新の公募要領で確認してください。

棚卸実査にAIを使う場合、監査で見せても大丈夫か

監査法人や社内監査が立ち会う棚卸実査でも、AIに任せられる範囲は本文で挙げた 「集計」「差異照合」「報告書の下書き作成」と変わりません。実査だからといって AIに任せられる範囲が広がったり狭まったりすることはありません。

ただし実査の記録として使う場合、次の3つは人が追加で行います。

  1. AIが出した集計結果と、立会人(監査人・社内監査担当者)が実査時に自分の手元で 確認した現物数を、提出前に突き合わせる
  2. 差異一覧・報告書の下書きは、経理責任者が内容を確認し、承認した上で監査人・上長に提出する (AIが作った時点のものをそのまま出さない)
  3. AIに読み込ませた理論在庫データ・カウントデータの日付とバージョンを記録しておく (あとで「どの時点のデータを使ったか」を聞かれたときに答えられるようにする)

この語で調べる人が次に詰まりやすいのは、「AIの集計結果そのものを監査証跡として 提出していいか」という点です。答えは、AIの出力単体では証跡にならず、 上の3点のように人が確認・承認した記録とセットで保管して初めて証跡として使える、という形になります。 AIの処理内容(何を入力し、どの理論在庫データと照合したか)を後から説明できる状態にしておくことが、 実査での使い方と通常の棚卸での使い方の唯一の違いです。

棚卸実査の手順と必要な書類:AIを使う場面はどこか

棚卸実査は、数える前の準備と、数えた後の調査までを一続きで見ると、AIを入れる場所が決まります。

  1. 実施要領を決める(誰が・どこを・どの順で数えるか。立会人の役割もここで書く)
  2. 帳簿(理論在庫)の数字を、実査の基準日で締める。ここがずれると差異が全部「原因不明」になる
  3. 現物を数える。二重に数える、数え漏れを防ぐため、数えた棚には札や印を付ける
  4. カウント結果を帳簿と突き合わせる(AIに任せやすい工程)
  5. 差異が出たものを、基準に沿って人が再確認する
  6. 差異一覧と報告書を作り、責任者が承認して提出する(下書きはAIに任せやすい)
  7. 差異の会計処理を決め、実査の記録を保管する

用意する書類は次のとおりです。

  • 棚卸実施要領(手順書)
  • 棚卸表・カウントシート(現物を数えた結果を書く)
  • 帳簿または現物台帳(突き合わせる元の数字)
  • 差異一覧と、差異の原因をたどったメモ
  • 責任者の承認が分かる記録

AIを使う場合は、AIに読み込ませたデータの日付と版を、この書類の一式に加えておきます。

画像認識で数える道具は、実査でそのまま使えるのか

写真から数を出す道具は、数える工程を助ける目的で使えます。 ただし、出た数を実査の数字として採用してよいかは別の判断です。 監査人が立ち会う場合は、使う道具と確認の方法(抜き取りで人が数え直す、など)を、実施要領に書いて事前に伝えておきます。 その場で初めて見せると、数え直しになり、かえって時間が増えます。

判断が分かれるところ

  • 立会人が現物を自分で数える場合: AIの集計結果は、立会人の数との突き合わせ用に使う
  • 立会いが無い社内の実査の場合: AIの集計を使い、差異が大きいものだけ人が数え直す
  • 道具で数えた数を実査の数字にしたい場合: 数え直しの基準と範囲を、先に責任者が決めて記録する

よくある質問

バーコードやハンディ端末で数えている場合も、AIは使えますか。 使えます。ハンディ端末から出力したカウントデータをAIに読み込ませ、理論在庫との照合・集計を任せる形になります。 数える工程自体はハンディ端末や人の作業のままで、AIが担うのはその後のデータ処理です。

循環棚卸(在庫の一部ずつを順番に数える方式)でもAIは使えますか。 使えます。むしろ循環棚卸は棚卸のたびに一部データが増えていくため、前回までの結果との比較集計をAIに任せると、 毎回手作業で積み上げるより手間が減ります。

複数店舗・複数倉庫がある場合、店舗ごとにやり方を変える必要がありますか。 カウントシートの様式や理論在庫データの形式を店舗間で揃えておけば、同じ集計・照合の仕組みをそのまま使い回せます。 様式がばらばらな場合は、先に様式を統一する作業が必要です。

棚卸差異が出た商品の会計処理もAIに任せられますか。 差異金額の集計まではAIに任せられますが、棚卸減耗費として処理するか、評価損として処理するかは会計上の判断であり、 経理担当者や税理士が確認したうえで決めます。

店舗数が少ない小さな会社でも、AIを使う意味はありますか。 1店舗であっても、SKU数が多ければ集計・照合にかかる時間は同じように発生します。 担当者が少ない会社ほど、棚卸のたびに集計作業に追われる負担が大きいため、時間を減らす意味は十分にあります。

出典(2026年9月13日調査)

  • デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要(事務局公式サイト) https://it-shien.smrj.go.jp/news/40013 (補助率が原則1/2以内・最低賃金近傍事業者は2/3以内であること、補助額が業務プロセス数に応じて5万円〜450万円のレンジであることを確認。本文の記載と一致)
  • 国税庁 法人税基本通達 第2款 棚卸資産の評価損 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_01_02.htm (棚卸減耗費・評価損として計上できる条件が税務上定められていることを確認)
  • 国税庁 法人税基本通達 第4節 棚卸しの手続 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_04.htm (各事業年度終了時に実地棚卸を行うのが原則とされていることを確認)
理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 実地棚卸で現物を数える作業自体を、AIがハンディ端末やスキャンの代わりに行える。

× — 現物を数える作業は人や計測機器が担う部分で、AIが任せられるのはその後の集計・照合・報告だと本文で切り分けている。

Q2. カウント結果を入力すると理論在庫と自動で突き合わせて差異を出す集計作業は、AIに任せやすい。

○ — 決まったルールでの照合・集計はAIに任せやすい業務として本文で挙げている。

Q3. 棚卸差異が出た商品について、原因が盗難・破損・記録漏れのどれかを最終的に特定するのもAIがそのまま完結できる。

× — 差異の原因特定と対応の判断は人が行うと本文で述べている。

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いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。