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総務

品質クレームの再発防止書をAIで作る

結論

品質クレームの再発防止書は、1件あたり約55分の作業時間がかかる計算の社内文書です(後述の試算。このサイトでの仮置きで、公的な統計ではありません)。 AIに任せられるのは「事実の整理」「原因候補の洗い出し」「文書の下書き」の3つです。 原因を1つに絞る判断と、対策を実行するかどうかの承認は、AIにはできません。 月5件のクレームがある従業員50名の会社で試算すると、年間で約55時間が約29時間になる計算です。

再発防止書づくりで、AIに任せられること

再発防止書は、たいてい次の流れで作られます。

  1. クレームの内容を聞き取り、記録する
  2. 発生した工程・担当・状況を洗い出す
  3. なぜ起きたかを何段階か掘り下げる(なぜなぜ分析)
  4. 原因を1つか2つに絞る
  5. 対策を決め、いつまでに誰がやるかを書く
  6. 文書の形に整え、提出する

このうち、AIが向いているのは1・2・3・6です。 聞き取りメモや現場の報告を読み込み、時系列に並べ直す作業や、 「なぜ」を重ねて掘り下げる下書きを作る作業は、文章の整理そのものです。

一方、4と5は向いていません。原因を1つに絞ることは、 現場の事情を知っている人の判断であり、AIが持っている情報だけでは決められません。

任せられる 任せられない
聞き取りメモを時系列に整理する 原因をどれか1つに絞り込む
「なぜ」を重ねた分析の下書きを作る 対策を実行するかどうかの承認
同じような過去のクレームを探し出す 取引先への謝罪や説明の最終判断
文書の形式(様式)に流し込む 再発防止策の効果が出たかの評価

AIが出した下書きは、現場の担当者が事実と照らして直してから使います。

再発防止書づくりで、何時間が何時間になるのか

前提を置いた計算例です。従業員50名、品質クレームが月5件(年60件)発生する会社で試算しています。

作業 いまの時間 AI化後 差
聞き取りメモを時系列に整理する 15時間 6時間 9時間減
なぜなぜ分析の下書きを作る 20時間 8時間 12時間減
文書の様式に流し込み、体裁を整える 12時間 3時間 9時間減
内容が事実と合っているかの確認 8時間 12時間 4時間増
合計(年60件) 55時間 29時間 26時間減

試算の前提は次のとおりです。これはこのサイトでの仮置きで、公的な統計ではありません。

  • 聞き取りメモの整理は、いまが1件15分。AI化後は下書きを直す形で1件6分
  • なぜなぜ分析の下書きは、いまが1件20分。AI化後は1件8分
  • 様式への流し込みは、いまが1件12分。AI化後は1件3分
  • 確認の時間は、いまが1件8分。AI化後はAIの下書きが整った形で出てくる分、事実との突き合わせに時間がかかり1件12分
  • 時給を2,500円(人件費の仮置き)とすると、26時間は約6万5,000円分

確認の時間が増えているのは、意図した変化です。 下書きが読みやすい形で出てくるほど、中身を疑わずに流用してしまう危険が増えます。 文章の出来と、事実が合っているかは別ものだと決めて確認します。

再発防止書の作り方:AIを使う順番

過去1年分をまとめて作り直すのではなく、これから起きるクレーム1件から始めます。

  1. クレームの一次情報を集める。 取引先からの連絡内容、現場の状況、担当者の証言をそのまま残す
  2. 一次情報をAIに渡し、時系列の表に整理させる。 誰が・いつ・何をしたかを1行ずつに分ける
  3. 整理した表をもとに、なぜなぜ分析の下書きをAIに書かせる。 指示文は次の節を使う
  4. 現場の責任者が、下書きの「なぜ」を1段ずつ事実と照らして直す。 憶測で書かれた段があれば削る
  5. 原因を1つか2つに絞る。 ここは人の判断
  6. 対策と、担当・期限をAIの下書きに書き足す。 文章の体裁はAIに任せてよい
  7. 社内向けの原因分析メモと、取引先へ提出する再発防止書を分けて仕上げる。 客先提出用は原因の詳細を薄め、対策と期限を厚くする

7を分けるのは、社内向けと客先向けで書く粒度が違うためです。 社内メモには工程の詳細や担当者名まで書きますが、客先提出用は 再発防止に絞り、内部の人事的な事情には触れません。

AIへの指示文の文例

聞き取りメモをもとに、なぜなぜ分析の下書きを作らせるときの指示文です。 「クレーム内容」の部分を、実際の聞き取りメモに置き換えて使います。

以下は、ある品質クレームについての聞き取りメモです。
「なぜ」を4段階まで重ねて、原因の候補を洗い出してください。

ルール:
- 各段階は、メモに書かれている事実から導けるものだけを書く
- メモに書かれていないことは、推測で埋めず「情報不足」と書く
- 最後に、候補となる原因を2〜3個、箇条書きでまとめる
- 対策やその実行可否には触れない。原因の候補出しだけを行う

クレーム内容:
(ここに聞き取りメモを貼る)

ポイントは「対策には触れない」と指示することです。 AIは原因を書いた流れで、そのまま対策まで書こうとします。 原因の絞り込みと対策の決定は人の役目なので、この段階では止めます。

再発防止書を出す前のチェックリスト

取引先の名前や、担当者個人に関わる記述は、外に出す前に確認します。

□ 取引先名・担当者名を、記号に置き換えてAIに渡した(社内メモでは元に戻す) □ なぜなぜ分析の各段が、事実の裏づけと結びついているか確認した(推測のままの段がないか) □ 原因の絞り込みと、対策の実行可否を、現場の責任者が決めた □ 社内向けメモと、客先提出用の文書を分けて作った □ 使うAIサービスの、入力内容の扱いを確認した(【各自確認:学習に使われる設定の有無と、その切り替え方法を、提供元の公式ページで確認】) □ 取引先との契約や業界のガイドラインで、再発防止書の提出期限や様式に定めがないか確認した(【各自確認:自社が結んでいる取引基本契約書、または業界団体の品質管理ガイドラインで確認】)

担当者個人を責める書き方になっていないかも、提出前に読み返します。 再発防止書の目的は仕組みの見直しであり、個人の追及ではありません。

経営者が決めること

事実の整理と下書きをAIに任せても、次の3つは経営者や品質管理の責任者が持ちます。

  • 原因をどこまで掘り下げて絞るか。 なぜなぜ分析の段階数は、トヨタ自動車が「なぜを少なくとも5回」と社内で徹底していると公表しています(トヨタ自動車「サステナビリティ・マネジメントレポート2016」)。回数に厳密な決まりはなく、このサイトの文例は4段階に仮置きしています。業種や事案の重さで変わります
  • 対策を実行するかどうかの承認、および期限の設定。 ここをAIに委ねると、実行されない対策が積み上がります
  • 同じ原因のクレームが何度も出ていないかの振り返り。 半年や四半期など、見返す周期を決めます

再発防止書を1件ずつ丁寧に作るより、聞き取りメモの取り方を先にそろえるほうが、 その後の整理の精度が上がります。手順の1で挙げた「誰が・いつ・何を」の形式を、 クレーム受付の時点から固定しておきます。

よくある質問

なぜなぜ分析の「なぜ」を何段階まで掘り下げればよいですか。

トヨタ自動車は「なぜを少なくとも5回」と公表しています(トヨタ自動車「サステナビリティ・マネジメントレポート2016」)。 回数に法律上の決まりはなく、このサイトの文例は4段階に仮置きしています。 本当の原因に届くまで続け、事案が重い場合や、原因が組織の仕組みに関わる場合は、 段階を増やしても構いません。段階を増やすほど、AIの下書きに推測が混ざりやすくなるため、 各段で事実の裏づけがあるかを確認する頻度も増やします。

AIが出した原因の候補が複数あり、どれを選べばよいか分かりません。

複数の候補が出るのは正常な動きです。候補を絞り込むのは、現場の状況を知っている 責任者の役目です。候補ごとに「その原因なら、次に同じクレームが起きたときも 同じ説明で通るか」を自問すると、絞りやすくなります。

月1〜2件しかクレームがありません。それでもAIを使う意味はありますか。

意味はあります。件数が少ない会社ほど、再発防止書を作る担当者が毎回手探りになりがちです。 AIに聞き取りメモの整理となぜなぜ分析の下書きを任せれば、担当者が変わっても 一定の型で書けるようになります。

取引先から指定の様式がある場合も、この進め方は使えますか。

使えます。手順3と4で作った分析の中身を、指定の様式に流し込む作業は、 様式そのものをAIに読ませて項目を合わせれば任せられます。様式の項目が 社内の分析項目と一致しない場合は、対応表を先に作っておくと流し込みが早くなります。

過去のクレームの再発防止書を、あとからAIで整理し直す意味はありますか。

あります。過去の再発防止書をまとめてAIに読み込ませ、原因の傾向を分類させると、 「同じ工程で同じ種類の原因が繰り返されていないか」が見えやすくなります。 ただし、この分類結果から対策を変えるかどうかの判断は、経営者や責任者が行います。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 原因をひとつに絞り込み、対策を確定させる判断は、AIではなく人が行う。

○ — AIは原因の候補を並べるところまでで、絞り込みと確定は現場の責任者が行うと本文で述べている。

Q2. AIが作ったなぜなぜ分析の下書きは、確認せずにそのまま取引先へ提出してよい。

× — 現場の担当者が事実と照らして直してから提出すると本文で述べている。

Q3. 社内向けの原因分析メモと、取引先へ提出する再発防止書は、同じ文章をそのまま使い回せる。

× — 社内向けと客先向けでは書く粒度や表現が違うため、客先提出用は別に整えると本文で述べている。

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いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。