社内報・社内ニュースレターの作成をAIで進める

社内報の作成で、AIに任せてよいのはどこまででしょうか。 任せられるのは「原稿の依頼文」「取材メモからの記事の下書き」「誤字・表記ゆれの点検」の3つです。 一般的な業務量から試算すると、1号あたり約465分の仕事が約277分に縮みます(後述の試算)。 取材そのものと、載せてよいかの本人確認は、人の仕事として残ります。
社内報1号の作成時間のうち、AIで減らせるのはどこですか
社内報の手間は8つの工程に分けられます。AIが大きく効くのは、記事を書く工程と、定型のお知らせです。
社内報1号あたりの試算
| 工程 | いまの時間 | AI化後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 企画・ネタ出し | 60分 | 25分 | 35分 |
| 各部署への原稿依頼・催促 | 60分 | 40分 | 20分 |
| 社員へのインタビュー(取材) | 60分 | 60分 | 0分 |
| 取材メモから記事に起こす | 120分 | 50分 | 70分 |
| 定型のお知らせ(行事案内・連絡) | 40分 | 12分 | 28分 |
| 誤字・表記ゆれの点検 | 45分 | 20分 | 25分 |
| 体裁をそろえて配る作業 | 50分 | 40分 | 10分 |
| 本人・上長への確認 | 30分 | 30分 | 0分 |
| 合計 | 465分 | 277分 | 188分 |
試算の前提は次のとおりです。
- 従業員50名の会社で、月1回発行。総務の担当者1人が兼務で作る
- 1号は、インタビュー記事1本、部署からの寄稿2本、お知らせ数件の構成
- 1号あたり188分の削減。月約3.1時間、年約38時間
- 時給換算は3,000円と置く。年約11万円。自社の人件費に置き換えて計算する
- 数字は公的な統計ではなく、一般的な業務量から置いた目安である
取材と本人確認の時間が減らないのは、どちらも「人と話す・人が決める」仕事だからです。 発行が月2回なら削減は倍になります。年4回なら約12.5時間です。
部署への原稿依頼と催促は、AIでどう楽になりますか
依頼文と催促文は、毎回ほぼ同じ形で、相手だけが変わります。AIが得意な「定型の作成」です。 60分が40分に縮む試算です。減るのは文章を考える時間で、返事を待つ時間は減りません。
何に使うか:部署の責任者へ送る、原稿依頼のメッセージを作らせる。
あなたは、中小企業の総務の担当者です。
社内報の原稿依頼のメッセージを、部署の責任者宛てに作ってください。
次の材料にない日付や条件は作らないでください。
【材料】
・依頼先:◯◯部の責任者
・依頼内容:部署の最近の取り組みを、400字前後で
・締切:◯月◯日
・提出先:◯◯(担当者名は書かない)
・発行予定日:◯月◯日
【書き方】
1. 冒頭の1行で「何を、いつまでに」を書く
2. 忙しい相手なので、全体を5行以内に収める
3. 断りにくい命令調にせず、丁寧に頼む
4. 最後に「箇条書きのメモでも構いません」と添える
◯◯を自社の内容に置き換えて使います。 最後の一言が効きます。完成した文章でなくメモでよいと伝えると、原稿が集まりやすくなることがあります。 催促の文面は、同じ指示文の「材料」を「締切を過ぎた」に変えるだけで作れます。
取材メモから社員インタビュー記事を作るとき、どこまでAIに任せられますか
取材メモを読みやすい記事に整えるところまでは、任せられます。1本120分が50分ほどになる試算です。 取材で話を聞くのは人です。ここをAIに置き換えても、記事の中身は薄くなります。
危ないのは、AIがメモにない発言を補って書くことです。 話し言葉を整えるうちに、本人が言っていない感想や数字が混ざります。
何に使うか:取材メモから、社員紹介の記事の下書きを作らせる。
次の取材メモだけを使って、社員紹介の記事を作ってください。
メモにない発言・数字・出来事は書かないでください。
発言は「」で囲み、メモの言葉を変えないでください。
【記事の条件】
・長さ:600〜800字
・構成:冒頭の2行で「誰が、何をしている人か」→ 仕事の内容 → 最近の出来事 → 一言
・読み手:社内の全員(他部署の人が、声をかけたくなる内容にする)
・文体:やわらかい敬体
【取材メモ】
・氏名:社員A(◯◯部・入社◯年目)
・仕事の内容:◯◯
・最近あった出来事:◯◯
・本人の発言:◯◯
「【取材メモ】」の中を、自社の取材内容に置き換えます。氏名は、社内に配る段階で実名に直します。 「メモの言葉を変えない」の指定が要です。これが無いと、AIは発言を読みやすく言い換えます。
下書きができたら、本人に見せます。 発言の意味が変わっていないか、載せてよい内容かは、本人にしか判断できません。
行事案内などの定型のお知らせは、どう作ればよいですか
日時・場所・申込先を並べるお知らせは、材料さえあればAIが数十秒で形にします。 40分が12分ほどになる試算です。差は大きいですが、事実の確認は人が行います。
何に使うか:行事案内を、社内報のお知らせ欄の形に整えさせる。
次の情報から、社内報の「お知らせ」欄の文章を作ってください。
情報にない日時・場所・費用は書かないでください。
1件を3行以内にしてください。
1行目に「日時・場所・申込先」をそろえて書いてください。
【情報】
・行事名:◯◯
・日時:◯月◯日◯時〜◯時
・場所:◯◯
・申込先と締切:◯◯、◯月◯日まで
・持ち物・注意:◯◯
◯◯を自社の内容に置き換えます。 曜日と日付の組み合わせは、AIが間違えることがあります。カレンダーで人が照らします。
誤字・表記ゆれの点検は、AIに任せてよいですか
点検役としてなら任せられます。書き直す役としては任せません。 45分が20分ほどになる試算です。
「サービス」と「サーヴィス」、「お客様」と「お客さま」のように、同じ言葉の書き方が号の中でばらつく問題は、人が読むと見落としやすいものです。
何に使うか:完成した原稿の誤字・表記ゆれ・数字の食い違いを指摘させる。
次の社内報の原稿を点検してください。書き直しはせず、指摘だけを返してください。
点検するのは次の4つです。
1. 誤字・脱字
2. 表記ゆれ(同じ言葉が別の書き方になっている箇所)
3. 数字・日付が、原稿の中で食い違っている箇所
4. 「」の中の発言が、取材メモと違っている可能性のある箇所
「どの段落の」「何が」を、1件ずつ書いてください。
【取材メモ】
(ここに取材メモを貼る)
【原稿】
(ここに原稿を貼る)
「(ここに〜を貼る)」を、自社の取材メモと原稿に置き換えます。 4つ目の項目が、前の節で書いた「AIが補った発言」を見つける網になります。
社員の情報をAIに渡す前に、何を確認すればよいですか
社内報には、社員の氏名、顔写真、部署、入社年、家族や趣味の話が入ります。何でも貼ってよいわけではありません。 ツールによっては、入力した内容が学習に使われる設定があります。【各自確認:利用中のAIツールが入力内容を学習に使うか。各ツールの公式ヘルプの「データの利用」の項で確認】 社員の情報を社内報に載せる場合の法令上の扱いも、自社の運用で確かめます。【各自確認:社員情報を社内報に載せてよい範囲。自社の個人情報の取り扱い規程で確認し、規程に無ければ社労士・弁護士に相談】
社員情報をAIに渡す前のチェックリスト
□ 社員の氏名を「社員A」のような記号に置き換えた □ 正式な発表前の人事異動・昇進・組織変更の情報が入っていない □ 病気・家族・住所など、載せる必要のない私的な情報が入っていない □ 取材した本人に、記事にすることを伝えてある □ 顔写真や録音データをそのまま貼らず、必要な文字だけを取り出した □ 使うツールの、入力内容の学習設定を確認した(会社が認めたツールか)
1つでも空欄なら、そこを直してから渡します。 記号に置き換えても、記事の下書きの質は落ちにくくなっています。必要なのは話の内容で、氏名ではないからです。
導入は何から始めればよいですか
いきなり全部を変えず、次の号から工程を1つずつ足します。
導入の手順
- 今の号の作成時間を、工程ごとにメモする(試算の表と比べるため)
- 上のチェックリストで、使うツールと置き換えのルールを決める
- 最初の号は、定型のお知らせだけAIで作る(失敗しても被害が小さいため)
- 次の号で、原稿依頼と誤字の点検を加える
- その次の号で、インタビュー記事の下書きを試す。本人確認で直された箇所を数える
- 3号ぶん測り、本記事の試算(465分から277分)と比べる
差が出ないときは、AIを変える前に、取材メモの書き方を見直します。 取材メモが「良い話だった」だけでは、AIも記事を書けません。「いつ」「何を」「どう思ったか」を1行ずつ残すと、下書きの直しが減ります。
よくある質問
社員が書いてきた原稿の文体を、AIでそろえてよいですか。 文体をそろえる作業は向いています。ただし、書いた本人の主張や言い回しの特徴まで消えることがあります。そろえた原稿は本人に戻して確認を取ります。
インタビューの録音を、AIで文字にしてよいですか。 録音すること自体、相手の同意を先に取ります。文字にするツールが、録音データをどう扱うかも確認します。【各自確認:利用中の文字起こしツールが録音データを保存・学習に使うか。各ツールの公式ヘルプの「データの利用」の項で確認】
社長メッセージも、AIに書かせてよいですか。 下書きの骨組みまでです。社長の言葉として出す以上、社長本人が読み、自分の言葉に言い直します。メッセージの中の会社の方針や数字は、AIに作らせません。
紙で配る社内報でも使えますか。 使えます。AIが担うのは文章の部分で、紙でも社内メールでも同じです。紙面の割り付けや印刷の確認は、これまでどおり人が行います。
年に数回しか出さない社内報でも、やる意味はありますか。 年4回なら、この試算で年約12.5時間の削減です。大きな数字ではありません。取材メモからの記事の下書きだけ使うなど、1工程に絞って試すのが現実的です。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. 社員インタビューの記事は、本人に見せて確認を取る前に社内へ配ってよい。
× — 発言の意味が変わっていないか、載せてよい内容かは本人にしか判断できない(本文参照)。
Q2. 取材メモにない発言を、AIが補って記事に入れることがあるため、補わせない指示を書く。
○ — 「メモにない発言・数字は書かない」と指示文に入れて防ぐ(本文参照)。
Q3. 発表前の人事異動の情報は、下書きを早く作るために先にAIへ渡してよい。
× — 正式な発表前の情報は、AIに渡す資料に含めない(本文参照)。
御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。
いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)
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