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税理士・社労士事務所の顧問先対応をAIで軽くする

結論

税理士・社労士事務所の顧問先対応は、問い合わせへの一次回答、巡回前の準備、月次レポートの下書き作成にAIを使えます。 一般的な業務量から試算すると、この3つだけで担当者1人あたり月15時間前後が空く計算です(後述の試算・前提つき)。 一方で、税務・労務の解釈や顧問先への最終回答、申請書への押印・提出は、これまでどおり有資格者が担います。 AIに任せるのは「材料をそろえて下書きを作る」ところまでで、「その内容で顧問先に伝えるか」を決めるのは人です。

顧問先対応、何にそんなに時間がかかるのか

顧問先対応の実務を分解すると、次のようになります。

  • 顧問先から届く電話・メールでの相談に、内容を確認しながら一次回答を作る
  • 月次巡回・訪問の前に、前回の宿題と今回の試算表の数字を見ながら確認事項を整理する
  • 顧問先ごとの対応履歴(いつ何を聞かれ、どう答えたか)をノートや台帳に残す
  • 税制改正・社会保険料改定などのお知らせを、顧問先向けの文章にまとめて配る

1件あたりは短時間でも、担当する顧問先が数十件になると、 同じような内容の一次回答や確認事項の整理に毎月まとまった時間が取られます。

顧問先対応でAIに任せられること

AIに任せられる作業は、次の3種類に絞られます。

  • 一次回答の下書き作成:過去の類似質問への回答をもとに、問い合わせへの回答文の下書きを作る作業
  • 巡回前の準備資料作成:前回の議事録・宿題と今回の試算表の数字をもとに、確認事項リストの下書きを作る作業
  • 月次レポート・お知らせ文の下書き作成:数字や改正内容をもとに、顧問先向けの文章の下書きを作る作業

いずれも「もとになる情報や過去の型がすでにある」作業です。 AIが作る回答文はあくまで下書きであり、顧問先ごとの契約内容や過去の経緯までは反映されません。 そのため、下書きをそのまま送るのではなく、担当者が内容を確認してから送る工程を残します。

顧問先対応でAIに任せられないこと

次の3つは、AIではなく担当者・有資格者が担う業務です。

  • 税務・労務の判断そのもの:法解釈や個別の事情を踏まえた助言は、資格者本人の責任で行います
  • 顧問先への最終回答の送信:下書きの内容を確認し、送ってよいかを判断するのは担当者です
  • 申請書・届出書への押印と提出:責任を伴う最終工程は、これまでどおり人が担います

AIが担うのは「よくある質問の答えの型」「確認事項の洗い出し」「文章の下書き」までです。 「その内容で本当に顧問先に伝えてよいか」を決めるのは、担当者の役割のまま変わりません。

顧問先対応で何時間減るか(試算)

一般的な業務量から試算すると、次のようになります。

業務 いまの時間(月・1人あたり) AI化後(月) 差
問い合わせへの一次回答作成 12時間 6時間 6時間
巡回前の準備資料作成 8時間 3時間 5時間
月次レポート・お知らせ文の下書き 6時間 2時間 4時間
合計 26時間 11時間 15時間

試算の前提は次のとおりです。

  • 顧問先30〜40件程度を担当する職員1人を想定
  • 「いまの時間」は、一次回答・準備資料・レポート作成をすべて手作業で行う場合の目安
  • 「AI化後」は、AIに下書き作成までを任せ、担当者は内容確認と最終判断のみを行う場合の目安
  • 税務・労務の相談内容そのものを検討する時間、面談・訪問の移動時間は含めていません

担当する顧問先の件数や相談内容の複雑さによって、実際の差は変わります。 自社で実測した数字に置き換えて使う前提でご覧ください。

今日から使える指示文例

顧問先からのよくある質問に、一次回答の下書きを作ってもらうときの指示文です。 過去の類似質問と回答(分かる範囲でよい)、今回届いた質問と一緒にAIに渡します。

次の顧問先からの質問に対して、一次回答の下書きを作ってください。

- 質問内容:{ここに顧問先からの質問をそのまま貼る}
- 過去に似た質問への回答例:{分かる範囲で貼る。無ければ「無し」}
- 回答の型:結論を最初の1文で示し、その後に理由と次に必要な手続きを箇条書きで示す
- 断定できない制度・金額の話は書かず、「確認のうえ改めてご連絡します」に留める

顧問先名・個人名は書かず、「ご担当者様」で統一してください。

「顧問先名・個人名は書かない」の指定は、入力データに実名を含めないための工夫です。 できあがった下書きは、事実関係と回答内容に誤りが無いかを担当者が確認してから、 実際の顧問先名に差し替えて送ります。

導入前チェックリスト

顧問先対応にAIを使い始める前に、次の3点を確認します。

  • □ 顧問先の氏名・法人名・具体的な数字を、AIツールに入力してよいかを事務所として決めているか
  • □ AIが作った下書き(回答・準備資料・レポート)を、誰が・いつ最終確認するかを決めているか
  • □ 過去の質問と回答、巡回時の議事録を、AIに読み込ませられる形で残しているか

この3点が曖昧なまま始めると、下書きをそのまま送ってしまい、 顧問先ごとの経緯を踏まえない回答が届く、といった事態につながります。

導入するときの注意点

顧問先対応で扱う情報には、法人の売上・利益、従業員の給与や社会保険の情報など、 守秘義務の対象となるものが多く含まれます。 税理士には税理士法第38条、社会保険労務士には社会保険労務士法第21条で、 それぞれ秘密を守る義務が定められています。 税理士法第38条は「正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない」、 社会保険労務士法第21条は開業社会保険労務士または社会保険労務士法人の社員に対して、 業務に関して知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、または盗用することを禁じています (e-Gov法令検索の税理士法第38条、厚生労働省掲載の社会保険労務士法第21条の条文、 国税庁「税理士制度のQ&A」の「税理士法違反行為」で確認。2026年9月時点)。

無料で使えるAIツールの中には、入力した内容を学習に使う設定が 既定でオンになっているものがあります(例えばChatGPTの無料版・Plus版・Pro版は、 OpenAI公式ヘルプの「Data Controls FAQ」によると個人アカウントでは既定で学習に使う設定になっており、 利用者が「設定」の「Data Controls」で「Improve the model for everyone」をオフにする必要があります。 同ヘルプでは、ChatGPT Business・Enterprise・APIは既定で学習に使わないとされています。2026年9月時点)。 顧問先の氏名や具体的な数字を入力する前に、 学習利用をオフにできるかどうかを確認します (【各自確認:事務所が使うAIツールの学習利用の既定値と、オフにする手順。そのツールの公式ヘルプで確認】)。

判断に迷う場合は、氏名や法人名を伏せた形で質問内容だけをAIに渡し、 できあがった下書きに担当者が実際の宛先を当てはめる運用にすると、 入力する情報の範囲を狭められます。

よくある質問

顧問先からの問い合わせ対応は、AIでどのくらい時間が減りますか。 一般的な業務量から試算すると、一次回答の作成にかかる時間は 月12時間から6時間程度に減る計算です。回答内容の確認と送信の判断にかかる時間は残ります。

AIが作った回答文を、そのまま顧問先に送ってよいですか。 送ってはいけません。AIが作るのは下書きまでで、事実関係の確認と 送ってよいかどうかの判断は、担当者が行う工程として残します。

顧問先の氏名や数字をAIに入力しても問題ありませんか。 事務所としての方針を先に決める必要があります。守秘義務のある情報のため、 氏名や法人名を伏せて入力する、あるいは入力してよい情報の範囲を事前に定めておくことをすすめます。

社会保険や給与に関する顧問先からの相談も、AIに任せられますか。 相談内容を整理し、過去の類似相談をもとに回答の下書きを作る部分は任せられます。 ただし制度の適用条件や個別事情を踏まえた最終的な判断は、社労士本人が行います。

顧問先ごとの対応履歴を管理する作業もAIに任せられますか。 過去のやり取りを日付順に整理し、要点をまとめる作業はAIに任せられます。 ただし、その履歴をもとに次にどう対応するかを決めるのは、担当者の役割のまま変わりません。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. AIが作った顧問先への回答下書きは、内容を確認しないままそのまま送信してよい。

× — AIが作るのは下書きまでで、送信前の内容確認と最終判断は担当者が行う(本文参照)。

Q2. 顧問先ごとの対応履歴を整理する作業と、次にどう対応するかを決める作業は、同じ業務である。

× — 履歴の整理は機械的な作業だが、次の対応方針を決めるのは担当者の判断であり、別の業務として扱う(本文参照)。

Q3. 顧問先の氏名や具体的な数字をAIツールに入力する場合、事務所として入力してよい情報の範囲を事前に決めておく必要がある。

○ — 守秘義務のある情報を扱うため、入力範囲の方針を先に決めておく必要があると本文で述べている。

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いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。