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経営

稟議書の作成をAIで下書きする|通りやすい構成の作り方

結論

稟議書1本の作成には、一般的な業務量から試算すると約130分かかります。AIで下書きを作ると、約70分に縮みます。 減るのは「構成を考える時間」と「本文を書く時間」です。材料集めと数字の確認は減りません。 月8本の会社なら、月8時間の削減になる計算です(後述の試算)。 AIに任せるのは、材料を通りやすい順番に並べて文章にするところまでです。金額と根拠は人が入れます。

稟議書1本の作成時間のうち、AIで減らせるのはどこですか

作成の手間は4つの工程に分けられます。AIが効くのは、そのうち2つです。

稟議書1本あたりの試算

工程 いまの時間 AI化後 差
材料を集める(見積書・比較資料・過去の稟議) 30分 30分 0分
構成を考える(何を書き、どの順に並べるか) 20分 5分 15分
本文を書く 60分 25分 35分
抜け漏れの確認・差し戻しへの対応 20分 10分 10分
合計 130分 70分 60分

試算の前提は次のとおりです。

  • 対象は、金額が数十万〜数百万円の設備・ツール・外注の稟議(1本あたりA4で1〜2枚)
  • 稟議書を書く人は、ふだんから書き慣れている部長・課長クラス
  • 本文を書く時間は「白紙から書く」場合と、「AIの下書きを直す」場合の比較
  • 月8本(従業員50名程度の会社を想定)。月8時間、年96時間の削減
  • 時給換算は3,000円と置く。月2.4万円、年28.8万円。自社の人件費に置き換えて計算する

材料集めが減らないのは、見積書や比較資料は人が取り寄せるしかないからです。 確認の時間が半分になるのは、AIに「抜けている項目はないか」を聞けるからです。ただし、聞いたあとに人が確かめる手間は残ります。

決裁する人は、稟議書のどこを見て判断しますか

通りやすい稟議書は、決裁する人が知りたい順に書いてあります。 稟議書の書式や承認の順は、会社の規程(決裁権限規程など)で決めるものです。【各自確認:自社の稟議の書式と承認の順。自社の稟議規程・決裁権限表で確認】 そのうえで、決裁する人が確かめたい項目を、このサイトの提案する順で8つに並べます。

順番 項目 書く内容
1 承認してほしいこと 何を、いくらで、いつまでに承認してほしいか(1〜2行)
2 なぜ必要か いま起きている困りごとと、放置した場合の影響
3 比較した案 2案以上と「何もしない」案
4 選んだ理由 なぜその案か。他の案を選ばなかった理由
5 費用と効果 総額(初期費用+継続費用)と、回収の見込み
6 リスクと対策 うまくいかなかった場合の被害と、やめるときの条件
7 進め方 承認後の担当者・日程・確認の時期
8 添付資料 見積書・比較表・仕様書

差し戻されやすい書き方と、通りやすい書き方の違いを並べます。

項目 差し戻されやすい 通りやすい
冒頭 「業務効率化のため、下記のとおり申請します」 「◯◯の導入(年額◯◯円)の承認をお願いします。期限は◯月◯日です」
比較案 1案だけ 2案と「何もしない」案を並べる
費用 初期費用だけ 初期費用と、1年間の継続費用の合計
効果 「大幅に改善されます」 「月◯時間の削減。根拠は◯◯」
リスク 書かない 「合わなければ◯か月でやめる。違約金は◯◯円」

決裁する人は、冒頭の2行で「見るべき稟議か」を決めます。 だから、AIに下書きを作らせるときも、この8項目の順番を先に固定します。

AIに渡してよい情報と、渡してはいけない情報は何ですか

稟議書には、取引先の名前、見積の金額、社内の人事や業績の話が入ります。 これらを何でもAIに貼ってよいわけではありません。 ツールによっては、入力した内容が学習に使われる設定があります。たとえばChatGPTでは、設定の「Data controls(データコントロール)」で「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われません(OpenAIヘルプ「Data controls in ChatGPT」英語版 https://help.openai.com/en/articles/7730893-data-controls-in-chatgpt 、2026年10月時点)。同ヘルプによると、ChatGPT Business・Enterprise・Eduは、初期設定で入力内容を学習に使いません。【各自確認:使うツールが入力内容を学習に使うか。ツールの公式ヘルプの「データの利用」の項で確認】 入れる前に、次のチェックリストで仕分けます。

稟議書をAIに渡す前のチェックリスト

□ 取引先の会社名・担当者名を「A社」「B社」に置き換えた □ 見積書のファイルをそのまま貼らず、必要な数字だけを抜き出した □ 個人の氏名・給与・評価の情報が入っていない □ 他社との契約書の条文をそのまま貼っていない □ 使うツールの、入力内容の学習設定を確認した(会社が認めたツールか) □ 社内の規程で、稟議の内容を社外のツールに入れてよいか確認した

1つでも空欄なら、そこを直してから渡します。 会社名を置き換えても、下書きが書けなくなることはありません。下書きに必要なのは金額の大きさと比較の構造で、会社名ではないからです。

AIに下書きを作らせる指示文の文例

指示文は、8項目の順番と、人が入れる材料をセットで渡します。 下の文例の「◯◯」を、自社の内容に置き換えて使います。

何に使うか:8項目の順番で、稟議書の下書きを作らせる。

あなたは、中小企業の稟議書の下書きを手伝う担当者です。
次の材料だけを使って、稟議書の下書きを作ってください。
材料にない数字や事実は作らず「【材料なし】」と書いてください。

【材料】
・承認してほしいこと:◯◯の導入
・金額:初期費用◯◯円、年間の継続費用◯◯円
・現状の困りごと:◯◯に、月◯時間かかっている
・比較した案:A案(◯◯)、B案(◯◯)、何もしない場合
・選ぶ案:A案。理由は◯◯
・期待する効果:月◯時間の削減(根拠:◯◯)
・リスク:◯◯。やめる条件は◯◯
・進め方:担当は◯◯部の◯◯、◯月◯日までに開始

【書き方】
1. 冒頭の2行で「何を、いくらで、いつまでに承認してほしいか」を書く
2. 次の順に見出しを付ける:なぜ必要か/比較した案/選んだ理由/費用と効果/リスクと対策/進め方
3. 1文は60字以内。専門用語は使わない
4. 最後に、決裁する人が聞きそうな質問を3つ挙げる

直後に、「◯◯」を自社の材料に置き換えます。材料欄が空のままなら、AIは【材料なし】を返します。それが正しい動きです。 この指示文の要は「材料にない数字は作らない」の1行です。これが無いと、AIは効果の数字をもっともらしく作ります。

何に使うか:下書きの抜け漏れを点検させる。

次の稟議書の下書きを、決裁する人の立場で読んでください。
「承認するために足りない情報」と「説明が弱い箇所」を、それぞれ3つまで挙げてください。
書き直しはしないでください。指摘だけを返してください。

【下書き】
(ここに下書きを貼る)

「書き直しはしない」と指定する理由は、AIが勝手に数字や表現を変えるのを防ぐためです。 点検の結果を見て、直すかどうかは人が決めます。

出てきた下書きは、どこを人が直しますか

下書きが出たら、次の順で確認します。所要時間は、この試算では25分です。

下書きを直す手順

  1. 金額を、見積書の原本と1つずつ照らす(AIが丸めたり、桁を変えたりしていないか)
  2. 【材料なし】と書かれた箇所を全部探し、材料を入れる。埋まらないものは、その項目を削るか、稟議の前に調べる
  3. 「効果」の数字に、根拠が書いてあるかを見る。根拠が書けない数字は、消す
  4. 比較した案が、本当に検討した案かを見る(AIが「それらしい案」を足していないか)
  5. 「A社」「B社」に置き換えていた名前を、正しい名前に戻す
  6. 声に出して読み、自社の言い回しに直す。決裁する人が普段使わない言葉は、直す

3の作業がいちばん大切です。 AIが作る文章は、根拠がなくても自信ありげに書けてしまいます。決裁する人が信用するのは文章の上手さではなく、数字の根拠です。 根拠が弱いと分かっている数字は、「見込み。根拠は◯◯」と書いたほうが通ります。

差し戻されにくくするために、社内で決めておくことは何ですか

AIの使い方を個人に任せると、稟議の質がばらつきます。次の3つを、先に決めておきます。

決めること 決め方の例
どのツールを使ってよいか 会社が認めた1つに絞る。私用のアカウントは使わない
どの稟議で使ってよいか まずは金額の小さい定型の稟議から。人事・契約・訴訟に関わるものは使わない
AIを使ったことを記録するか 稟議書の下部に「下書きにAIを使用。数字と根拠は担当者が確認済み」と1行入れる

3つ目は、決裁する人への配慮です。 下書きにAIを使ったと分かっていれば、決裁する人は根拠の確認に力を入れられます。 隠す必要はありません。責任は、AIではなく提出した人にあります。

最初の1か月は、月8本のうち2〜3本だけで試します。 かかった時間を測り、本記事の試算(130分から70分)と比べます。差が出なければ、材料の集め方に問題があることが多いです。

よくある質問

AIで作った稟議書は、そのまま提出してよいですか。 提出前に、人が金額・根拠・比較案を確認します。AIは材料にない数字を作ることがあるためです。確認の手順は、本記事の「下書きを直す手順」を使います。

稟議書にAIを使ったことを書く必要はありますか。 法律で書く義務があるという情報は確認できていません。【各自確認:AI使用の記載を求める定めが自社にあるか。自社の稟議規程と、取引先との契約書で確認】義務がなくても、1行の記載を勧めます。決裁する人が、どこを重点的に確認すべきか分かるからです。

過去の稟議書をAIに読ませて、書き方を真似させてよいですか。 会社名・担当者名・金額を置き換えたうえなら、使えます。過去の稟議書には、取引条件や社内の事情が入っています。そのまま貼らず、構成(見出しの並び)だけを渡すほうが安全です。

決裁権限表で、金額ごとに必要な項目が違います。AIに対応させられますか。 対応できます。指示文に「金額が◯◯円以上の場合は、追加で◯◯を書く」と条件を入れます。ただし、決裁権限表そのものの内容は、人が正しく渡す必要があります。

社長に直接出す稟議と、部長が決める稟議で、書き方は変わりますか。 変わります。社長に出す稟議は、冒頭の1〜2行と金額に加えて、「やめる条件」を書きます。部長決裁は、現場の困りごとと効果の根拠を厚くします。指示文の「書き方」欄に、提出先を書き足します。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 稟議書に入れる金額や見積の数字は、AIに考えさせて埋めてよい。

× — 金額と根拠は人が入れる材料で、AIには並べて文章にさせるだけにする(本文参照)。

Q2. 稟議書の冒頭には、承認してほしい内容と金額を先に書く。

○ — 決裁する人が最初に知りたいのは結論で、冒頭の1〜2行で判断できる形にする(本文参照)。

Q3. AIが作った稟議書の下書きは、人が数字と根拠を見直す前に回付してよい。

× — 下書きは叩き台で、数字と根拠の確認は人の仕事として残る(本文参照)。

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御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。

いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

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この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。