メルマガ・お知らせ配信の文章作成をAIで進める

メルマガやお知らせの文章は、AIにどこまで書かせてよいのでしょうか。下書きと件名案、言い回しの手直しまでは任せられます。1本あたり約4時間の作業が、約2時間になる計算です(一般的な業務量からの試算。後述)。一方、日付・金額・約束ごとの確認と、配信の判断は人が持ちます。AIは自社の事情を知らず、渡した材料の範囲でしか書けないからです。
メルマガ・お知らせの作成で、AIに任せられる作業はどれか
ここでいうメルマガは、月1〜2回など定期的に出す読み物です。お知らせは、営業日の変更や新商品の案内など、必要なときに出す連絡です。
AIに任せやすいのは、次の4つです。
- 材料のメモから、文章の下書きを作る
- 件名の案を何本も出す
- 硬い文章を、読みやすい言い回しに直す
- 誤字や表記のゆれを見つける
任せられないのは、次の4つです。
- 何を伝えるかの決定
- 日付・金額・期限など、事実の最終確認
- 取引条件や約束になる内容の判断
- 配信ボタンを押すこと
AIは、書くことは得意です。しかし、書いた内容が正しいかどうかは判断できません。この線引きを先に決めておくと、事故が起きにくくなります。
1本の作成は何時間から何時間になるのか(試算)
メルマガ1本(800〜1,500字程度)を、担当者1人で作る場合の試算です。
| 作業 | いまの時間 | AI化後 | 差 |
|---|---|---|---|
| ネタ・材料の整理 | 40分 | 25分 | 15分 |
| 下書きの作成 | 90分 | 25分 | 65分 |
| 件名案・冒頭文づくり | 25分 | 5分 | 20分 |
| 推敲・誤字の確認 | 40分 | 20分 | 20分 |
| 事実確認・承認 | 20分 | 25分 | -5分 |
| 配信設定・テスト送信 | 30分 | 30分 | 0分 |
| 合計 | 245分(約4.1時間) | 130分(約2.2時間) | 115分(約1.9時間) |
試算の前提は次のとおりです。
- 担当者1人が、材料集めから配信設定まで通しで行う
- 「いまの時間」は、ゼロから書く場合の一般的な業務量から置いた仮の数字
- 実測ではなく、このサイトの試算。自社の実際の時間に置き換えて使う
- 事実確認だけは、AIの文を読み込む分だけ5分増える
- 配信設定は、AIで短くならない
事実確認の時間が増える点が大事です。ここを削ると、間違った案内が顧客に届きます。
続いて、配信の本数ごとに月の削減時間を出します。人件費は時給3,000円で置きました。これも仮の数字です。
| 月の配信本数 | 月の削減時間 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 2本 | 約3.8時間 | 約11,500円 |
| 4本 | 約7.7時間 | 約23,000円 |
| 8本 | 約15.3時間 | 約46,000円 |
月4本は、メルマガ月2回とお知らせ月2回を想定した数字です。時給は自社の数字(給与に社会保険料などを足した1時間あたりの額)に置き換えてください。
AIに書かせる前に、何を渡せばよいのか
AIは、渡された材料から文章を作ります。材料が薄いと、足りない部分を想像で埋めます。存在しない割引や、実際には無い納期を書いてしまう事故は、ここから起きます。
1本につき、次の5つを渡します。
| 渡すもの | 中身の例 |
|---|---|
| 目的 | 読者に何をしてほしいか(申込み、来店、確認など) |
| 読者 | 誰宛てか(既存のお取引先、資料請求した人など) |
| 事実 | 日付・金額・期限・場所。原資料から写す |
| 守ること | 書いてはいけないこと、約束できないこと |
| 見本 | 過去に出したメルマガ1〜2本 |
特に効くのは「見本」です。自社のこれまでの文面を見せると、言い回しが自社らしくなります。ただし、見本に顧客の名前や個別の取引内容が入っていないか、渡す前に確認します。
AIへの指示文の文例(下書き・件名・照合の3本)
そのまま貼って使えるものを3つ置きます。「◯◯」の部分だけ自社の内容に置き換えます。
1本目:材料から下書きを作る
あなたは「株式会社◯◯」の、お取引先向けメルマガの編集担当です。
下の【材料】だけを使って、メルマガの下書きを作ってください。
【材料】に無い数字・日付・商品名・効果は、書かないでください。
分からない点は、文中に「【確認】◯◯」と入れてください。
読者:◯◯(例:既存のお取引先の担当者)
文字数:800字前後
構成:あいさつ1文、今回の要点(3つまで)、詳細、問い合わせ先
文体:です・ます。専門用語は使わない
【材料】
・◯◯
・◯◯
読者、文字数、材料の欄を自社の内容に置き換えます。「【確認】」が付いた箇所は、人が原資料で埋めます。
2本目:件名の案を出す
上の下書きの件名を、5案出してください。
条件:30字以内。数字か具体的な言葉を1つ入れる。
「重要」「緊急」など、あおる言葉は使わない。
5案のうち、本文の内容と合うものを人が選びます。件名と本文がずれていないかは、必ず見ます。
3本目:書かれていない事実を洗い出す
上の下書きの中で、【材料】に書かれていない情報
(数字・日付・固有名詞・効果の表現)を、すべて一覧にしてください。
AI自身に確認させる方法です。抜けが出ることはあるため、補助として使います。最終確認は人が行います。
配信前に人が確認するチェックリスト
AIの文章を配信する前に、次の項目を人が見ます。1つでも外れたら配信しません。
□ 日付・曜日・時間が、原資料と一致している □ 金額・割引率・申込みの期限が、原資料と一致している □ 商品名・サービス名・担当者名の表記が正しい □ 材料に無い効果、実績、「No.1」などの表現が入っていない □ 問い合わせ先(電話・メール・営業時間)が現在のものになっている □ 件名と本文の内容が食い違っていない □ 送信者の名称と、配信を止める方法の案内が入っている
顧客の情報は、AIに入力しない
文面づくりに、配信先の一覧は要りません。氏名やメールアドレスを、AIに貼り付けないでください。
OpenAIは公式の方針ページで、ChatGPTなど個人向けサービスでは入力内容をモデルの学習に使うことがあり、設定で止められると説明しています(OpenAIヘルプセンター「How your data is used to improve model performance」。2026年10月11日、検索結果に引用された公式ページの記述で確認。ページ本体は取得できず)。ChatGPT Business・Enterprise・Edu・APIは、既定では入力を学習に使わないとされています(OpenAI「Enterprise privacy」「Business data」ページの記述。同じ方法で確認)。使う前に、設定画面で確認します【各自確認:利用中のAIツールが入力内容を学習に使うか。各ツールの設定画面または公式ヘルプの「データの利用」の項目で確認】。
広告を含むメールには法律のルールがある
広告や宣伝を含むメールを送るときは、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)で、あらかじめ同意した相手などにしか送れません(3条1項。取引関係のある相手などは例外)。同意などの記録は保存します(3条2項)。配信停止を求められたら送れません(3条3項)。送るときは、送信者の氏名または名称と、配信停止を受け付けるメールアドレスなどを表示します(4条)。条文の内容は2026年10月11日に、総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」の特定電子メール法のページと、消費者庁が掲載している法律条文PDFの原文で確認しました(3条1項の例外の号に「取引関係にある者」があることも原文のとおりです)。e-Gov法令検索の画面は取得できませんでしたが、総務省ページの参照先は2022年6月17日時点の版で、条番号は一致しています。AIが作った文面でも、この責任は配信する会社にあります。
お知らせの種類別に、AIに任せてよい範囲はどこまでか
すべてのお知らせを同じ扱いにはできません。内容が重いほど、人が書く割合を増やします。
| お知らせの種類 | AIの担当 | 人の担当 |
|---|---|---|
| 営業日・休業日の案内 | 下書きまで全部 | 日付と曜日の確認 |
| 新商品・サービスの案内 | 下書きと件名案 | 特徴と価格の確認 |
| 定期メルマガ(読み物) | 見出し案、下書き、言い回しの直し | 主張と実例の確認 |
| 価格改定・仕様変更 | 言い回しの手直しのみ | 本文を主に書く。取引条件に関わるため |
| 不具合・事故のお詫び | 任せない | 人が書く。お詫びの言葉と対応の約束は責任の判断 |
営業日の案内のように、型が決まっているものから始めます。お詫びの文面は、AIの下書きを土台にしない方が安全です。
導入の手順(最初の1か月)
いきなり全部を切り替えず、1種類から始めます。
- 過去に出したメルマガとお知らせを10本ほど集め、種類別に並べる
- 型が決まっているもの(営業日の案内など)を1種類選ぶ
- 上の文例1本目に材料を入れ、下書きを作る。同じお知らせを、これまでの方法でも作り、時間を計って比べる
- 前節のチェックリストを社内の配信ルールとして、印刷して机に置く
- 2週間続けて問題が無ければ、新商品の案内や定期メルマガに広げる
3の「時間を計って比べる」が大事です。自社の実測が取れれば、上の試算表を自社の数字に置き換えられます。
よくある質問
配信先のリストをAIに読み込ませてもよいですか。
避けます。文面づくりには配信先の氏名やメールアドレスは要りません。宛名の差し込みは、配信システム側の機能で行います。
自社らしい言い回しにするには、どうすればよいですか。
過去に配信したメルマガを、見本として1〜2本渡します。「この文体に近づけてください」と指示文に添えます。見本に顧客の個別情報が入っていないか、渡す前に確認します。
配信システムに文章作成の機能が付いている場合は、別のAIを使わなくてよいですか。
機能が付いている配信システムもあります。使えるかどうか、料金がかかるかどうかは、契約しているシステムで確認します【各自確認:利用中の配信システムに文章作成機能があるか、料金がかかるか。契約している配信システムの管理画面またはサポートページで確認】。どの方法でも、事実の確認は人が行います。
AIに作らせた件名で、メールを開く人は増えますか。
増えるとは言い切れません。件名の案を5本出せますが、どれが効くかは配信してみないと分かりません。半分ずつに別々の件名で送り、メールを開いた人の割合(開封率)を比べる方法があります。数字の保証はできません。
配信が月1回程度でも、AIを使う意味はありますか。
月1本なら、削減は月に約1.9時間です。金額は小さくなります。ただ、材料の整理と指示文の型を作っておくと、担当者が変わったときも文章の質が保てます。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. メルマガの文面を作らせるとき、配信先の顧客の氏名やメールアドレスの一覧をAIに渡す必要はない。
○ — 文面づくりに宛先リストは要らず、個人情報は入力しないのが原則だと本文で述べている。
Q2. AIが作った文面の日付・金額・営業時間は、原資料と照らして人が確認してから配信する。
○ — AIは材料に無い数字を書き足すことがあるため、事実の照合は人の仕事だと本文で述べている。
Q3. 材料を渡さなくても、AIは自社の新商品の特徴を正確に書ける。
× — AIは自社の情報を知らず、渡した材料の範囲でしか書けないと本文で述べている。
御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。
いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)
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