ホーム›記事›発注量の決定をAIで支える|勘に頼る在庫を減らす
経営

発注量の決定をAIで支える|勘に頼る在庫を減らす

結論

発注量は経験と勘で決めるしかないのでしょうか。過去の販売データと季節変動をAIに読み込ませれば、発注点と発注数の目安をAIが計算し、担当者は数量の最終判断と特殊要因の反映に集中できます。一般的な業務量から試算すると、月次の発注業務で担当者1人あたり月10時間前後が空く計算になります(後述)。仕入先との価格交渉や新商品の初回発注量など、取引関係や市場の読みが要る判断は、引き続き人が担う必要があります。

なぜ発注量が経験と勘で決まってしまうのか

発注量の決定は、多くの会社で特定の担当者の経験に頼っています。原因は担当者の能力ではなく、判断材料を整理する仕組みが無いことにあります。

  • 過去の販売実績が、レジのデータ・エクセル・紙の伝票にばらばらに残っている
  • 季節変動や曜日変動を数値で把握しておらず、担当者の記憶が頼りになっている
  • 繁忙期になってから慌てて発注し、欠品か過剰在庫のどちらかに振れる
  • 発注担当者が休むと、他の人には発注量の根拠が分からない

発注量を決める作業は、「過去の実績から目安を出す」部分と、「取引先の事情や特殊要因を踏まえて最終判断する」部分に分けられます。この2つを分けて考えると、AIに任せられる範囲がはっきりします。

発注業務のどこをAIに任せられるか

発注が決まってから仕入先に発注するまでの工程を分けると、次のようになります。

工程 内容 担当
1. 過去の販売データの集計 商品ごとの販売実績を集める AI
2. 通常時の需要予測 季節・曜日の変動をふまえた目安を出す AI(人が確認)
3. 発注点・発注数の計算 在庫がいくつになったら何個発注するかを計算する AI(人が確認)
4. 特殊要因の反映 セール・天候・メディア露出などを加味して調整する 人
5. 新商品の初回発注量 実績が無い商品の発注数を決める 人
6. 発注書の作成 数量・納期を入れた発注書をつくる AI(人が確認)
7. 仕入先との価格・納期交渉 単価や納期についてやり取りする 人
8. 入荷確認・在庫反映 届いた数量を記録し在庫数を更新する AI

AIが力を発揮するのは、過去の実績を集計し、通常時の需要をもとに発注点・発注数の目安を出すところまでです。特殊要因の反映や新商品の発注量、仕入先との交渉は、取引関係や市場の読みが要るため人が担う必要があります。

需要予測、AIにどこまで任せられるか

過去の販売データから需要を予測する作業は、次の条件が整っている商品ほどAIに任せやすくなります。

  • 一定期間、継続して販売してきた実績がある(目安として1年以上のデータがあると季節変動を捉えやすくなります)
  • 季節・曜日による変動がパターンとして繰り返されている
  • テレビ露出やSNSでの急なバズなど、実績データに現れない要因の影響が小さい

逆に、発売したばかりの新商品、季節ごとに商品が総入れ替えになる業態、催事やイベントに合わせたスポット商材は、過去データが乏しいためAIの予測精度が下がります。こうした商品は、AIの予測をそのまま使うのではなく、担当者が実績データの少なさを踏まえて数量を決める必要があります。

一般的な業務量から試算した削減時間

月2回発注する商品群を例に、需要予測から発注書作成までの時間を試算すると次のようになります。

業務 いまの時間(月あたり) AI活用後 差
販売データの集計・確認 6時間 1時間(集計結果の確認のみ) 5時間
発注点・発注数の計算 4時間 1時間(算出結果の確認・特殊要因の反映) 3時間
発注書の作成 3時間 1時間(内容の確認・送信) 2時間
合計 13時間 3時間 10時間

試算の前提: 定番商品を中心とした月2回の発注業務で、データ集計から発注書作成までの作業時間を月13時間と仮定して計算しています。新商品や特殊要因が多い商品群では、人の確認作業が増えるため、実際の削減時間はこれより小さくなります。商品点数や発注頻度によっても変わります。

AIでは判断できないこと:仕入先交渉と特殊要因の反映

需要予測と発注点の計算をAIに任せても、次のことは人が行う必要があります。

  • 仕入先との価格・納期交渉(取引関係や信頼関係が絡む判断)
  • 新商品・スポット商材の初回発注量の決定
  • セール・天候急変・メディア露出など、実績データに現れない特殊要因の反映
  • 仕入先の資金繰りや生産状況など、社外には出ない事情を踏まえた判断
  • 発注量が想定より大きく外れたときに、AIの計算式自体を見直すかどうかの判断

これらは、過去のデータを整理するだけでは対応できず、取引先との関係や市場の動きを踏まえた判断が必要です。AIが出した発注量の目安は、必ず人が最終確認してから仕入先に発注する運用にしておく必要があります。

導入時に注意すること

発注量の決定にAIを使う場合、次の点を確認しておく必要があります。

  • 欠品と過剰在庫のどちらのリスクを重視するかを、AIに読み込ませる前に社内で決めておく
  • 過去の販売データがどこにどれだけ蓄積されているかを棚卸しする(集計されていないデータは使えません)
  • AIが出した発注量の目安を、誰がどのタイミングで確認するかを決めておく
  • 発注データを仕入先の受発注システムと連携できるかを確認する
  • 発注業務を支援するツールの料金体系や対応商品数の上限はサービスごとに異なり変わりやすいため、契約前に公式ページで最新の内容を確認する(2026年9月時点)

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)通常枠を活用できる場合があります。公式サイトによると、補助率は原則1/2以内(2026年10月から2027年9月までの間に3か月以上、最低賃金近傍の従業員が全従業員の30%以上いる場合は2/3以内)、補助額はプロセス数に応じて5万円以上450万円以下です(出典: デジタル化・AI導入補助金2026公式サイト、https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/)。申請前に最新の公募要領で条件を確認してください(2026年9月時点)。

導入の進め方

発注量の決定へのAI活用は、いきなり全商品に広げず、次の順番で進めると失敗が少なくなります。

  1. 販売実績が安定している定番商品を数点選び、過去データを整理する
  2. AIに需要予測・発注点の計算をさせ、実際の発注結果と数か月分を比較する
  3. 精度を見ながら対象商品を広げ、欠品・過剰在庫の発生状況を確認する
  4. 新商品や特殊要因の影響が大きい商品は、引き続き人の判断で発注する

よくある質問

Q. 発注量の需要予測は、どんな商品でも同じ精度で使えますか。 A. 過去の販売データが一定期間蓄積されている定番商品ほど精度が出やすく、新商品や実績の乏しい商品では精度が下がります。

Q. 欠品と過剰在庫、AIはどちらを優先して発注量を決めますか。 A. どちらを重視するかは会社の方針によって変わるため、AIに読み込ませる前に社内で優先順位を決めておく必要があります。

Q. 天候やイベントの影響を受けやすい季節商品・催事商材でも、AIの発注予測は使えますか。 A. 通常時の目安はAIが出せますが、天候急変やイベントによる急な需要変化への対応は人が判断する必要があります。

Q. 仕入先との価格交渉もAIに任せられますか。 A. 価格・納期の交渉は取引関係や信頼関係が絡むため、人が行う必要があります。

Q. 小さい会社でも発注量のAI活用に意味はありますか。 A. 発注担当者が1人しかいない会社ほど、担当者不在時の判断材料としてAIの計算結果が役立ちます。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 発注点や発注数の計算は、過去の販売データが蓄積されている定番商品であればAIに任せやすい。

○ — 過去の販売実績が一定期間蓄積されている定番商品は、AIに需要予測や発注点の計算を任せやすいと本文で述べている。

Q2. 新商品の初回発注量も、過去データが無いままAIが自動で正確に決められる。

× — 新商品は過去の販売実績が無いため需要予測の精度が下がり、初回発注量は人が判断する必要があると本文で述べている。

Q3. 天候の急変やイベントによる急な需要変化への対応は、AIではなく人が判断する必要がある。

○ — 特殊要因が絡む発注量の調整は人が担う必要があると本文で述べている。

無料・3分

御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。

いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)

無料のAI導入診断を受ける LINEで「相談」と送る
この記事の作り方: 下書きにAIを使い、制度・料金・ツールの仕様は公式ページに照らして事実確認したうえで公開しています。確認の取れない記述が残る記事は公開せず、一次資料が見つからない箇所は本文にそう書いています。運営は市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)です。誤りはLINEから知らせてください。