社内でAIを使う担当者は何人必要か

社内でAIを使う担当者は、何人いれば足りるのか。従業員10〜100名の会社なら、専任は要りません。 必要なのは、兼任の「責任者」1名と、その代行1名です。21名以上なら、これに部門ごとの「窓口」1名を足します。 従業員60名の会社の試算では、責任者の作業は週2時間、窓口5名を含めても全体で週3時間です。 この3時間を置くと、社員全体の手間が週10.5時間減る計算になります(後述の計算例)。
AIの担当者とは、何をする人で、何人に分けるのか
担当者と言っても、役割は3つに分かれます。1人に全部を任せる必要はありません。
| 役割 | 人数 | 何をするか |
|---|---|---|
| 責任者 | 1名 | 使ってよいツールと入力ルールを決める。質問に答える。効果を数え、経営に報告する |
| 代行者 | 1名 | 責任者が休んでいる間の質問に答える。ふだんは責任者の記録に目を通す |
| 部門窓口 | 部門ごとに1名 | 部門内の「これはAIに入れてよいか」を受ける。うまくいった指示文を部門で共有する |
このほかに、AIを使う一般の利用者がいます。利用者は自分の業務でAIを使うだけです。 担当者の仕事は、利用者が迷わず使える状態を保つことです。AIの操作を代わりにやる人ではありません。
専任が要らない理由は、作業量です。後述の試算で、責任者の作業は週2〜3時間です。 法定労働時間の上限は、原則として休憩を除いて週40時間です(労働基準法32条1項。厚生労働省の資料で確認)。 商業・接客娯楽業などで常時10人未満の事業場は、特例で週44時間です(同法40条)。この会社規模の記事なので、10人未満の店舗は対象外です。 この40時間で数えると、専任にしても稼働の大半が空きます。
従業員数別に、担当者は何人を置けばよいのか
次の表は、このサイトの目安です。実測ではなく、下に書いた前提での試算です。
| 従業員数 | 責任者 | 代行者 | 部門窓口 | 責任者の作業(週) |
|---|---|---|---|---|
| 10〜20名 | 1名(社長または部長が兼任) | 1名 | なし | 約1時間 |
| 21〜50名 | 1名 | 1名 | 部門ごとに1名(2〜4名を想定) | 1〜2時間 |
| 51〜100名 | 1名 | 1名 | 部門ごとに1名(5〜8名を想定) | 2〜3時間 |
前提(仮置き):
- AIを日常的に使う利用者は、従業員の半数とする
- 責任者の作業は、人数によらず要る分が週45分(利用状況の確認15分、経営への報告15分、制度やツール情報の確認15分)
- 利用者の人数に比例する分が、利用者1人あたり週2.5分(質問対応と指示文のとりまとめ)
- 部門窓口は1人あたり週12分
従業員10〜20名なら利用者は5〜10名で、責任者の作業は12〜25分に45分を足した約1時間です。 従業員100名なら利用者は50名で、125分に45分を足した約3時間になります。
担当者を置くと、社員全体の時間はどれだけ変わるのか|計算例
従業員60名、AIの利用者30名、部門が5つの会社を想定します。 担当者がいない場合と、責任者1名・窓口5名を置いた場合を、1週間の時間で比べます。
| 項目 | いま(担当者なし) | 担当者を置いた後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 指示文づくりの試行錯誤(利用者30名) | 15時間 | 5時間 | −10時間 |
| 入力してよいか迷って止まる時間と、出力ミスの手戻り | 5時間 | 1.5時間 | −3.5時間 |
| 担当者の作業(責任者+窓口5名) | 0時間 | 3時間 | +3時間 |
| 合計 | 20時間 | 9.5時間 | −10.5時間 |
前提(このサイトの仮置きで、実測値ではありません):
- 指示文づくり:担当者がいないと、利用者が1人あたり週30分を自己流の試行錯誤に使う。担当者が型を配ると、1人あたり週10分になる
- 迷って止まる時間:週12件×1件15分=3時間。ルールが決まると件数が半分の6件、1件5分で0.5時間
- 出力ミスの手戻り:週2件×1時間=2時間。確認の手順が決まると週1件で1時間
- 担当者の作業:責任者が週2時間(120分)、窓口が5名×週12分=60分
- 月4週で換算すると、差の10.5時間は月42時間。社内の人件費を時給3,000円と仮置きすると、月約12万6千円
読み取れることは2つです。
- 担当者の作業(3時間)は、新しく増える時間です。ほかの仕事から外して枠を渡さないと、本人の残業になります
- 効果の大半は、担当者の作業そのものではなく、利用者30名の試行錯誤が減る分から出ます
この表にはAIツールの利用料は含めていません。 【各自確認:契約中の生成AIチャットツールの1人あたり月額料金。各社の公式サイトの料金ページで確認】を、別に足してください。
責任者の週2時間は、何に使うのか
従業員60名の会社の場合の内訳です。
| 作業 | 週の目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 質問への対応 | 30分 | 「入れてよいか」「うまくいかない」に答える |
| 指示文のとりまとめ | 45分 | 部門窓口から集まった、うまくいった指示文を1か所にまとめる |
| 利用状況の確認 | 15分 | 誰がどの業務に使っているかを、部門窓口に聞く |
| 経営への報告 | 15分 | 月1回、減った時間と困りごとを1枚で報告する(月1時間を週に直した値) |
| 制度・ツール情報の確認 | 15分 | 料金や規約の変更を、公式ページで見る |
| 合計 | 120分 |
このうち「指示文のとりまとめ」は、下書きをAIに任せられます。後述の文例を使ってください。 この短縮は上の計算例には入れていません。入れれば、さらに差は開きます。
誰を担当者にすればよいのか|選ぶ前のチェックリスト
責任者の候補を、次の項目で確認します。5つのうち4つ以上そろう人を選びます。
- □ 自分の部門の業務を、ほかの人にも説明できる
- □ 周りの社員から、ふだんから相談を受けている
- □ 週2時間の枠を、ほかの仕事から外してもらえる(外せない人は選ばない)
- □ 社長や部門長にも、遠慮せずに意見を言える
- □ 動機が「AIが好き」より「面倒な作業を減らしたい」である
「ITに詳しい」は、条件に入れていません。 操作は後から覚えられます。覚えられないのは、どの業務なら任せてよいかという勘です。 その勘は、業務を長くやってきた人にあります。
次の人は、責任者から外します。
- 決算や繁忙期の仕事で、週2時間を外せない人
- 自分の仕事を、ほかの人に説明するのを嫌がる人
- 半年以内に退職・長期休業が決まっている人
社長が責任者を兼ねてよいのは、従業員20名以下の会社までです。 それより大きい会社では、社長が責任者だと、社員が質問しにくくなります。
担当者を決めたあと、最初の2週間は何をするのか|手順
- 第1日:責任者と代行者の名前を決め、本人に週の作業枠(責任者は週2時間)を業務時間として渡す
- 第1週:全社に担当者を周知する(次の文例)
- 第1週:21名以上の会社は、各部門で窓口を1名決めてもらう
- 第2週:質問を受ける場所を1か所に決める(メールの宛先を1つ、または連絡ツールの部屋を1つ)
- 第2週末:集まった質問と答えを整理する(次の指示文の文例)
- 4週目:経営に最初の報告をする。質問の件数と、担当者に使った時間を出す
社内に周知するときの文例
そのまま社内に出せる文面です。
件名:AI利用の担当者と相談窓口のお知らせ
業務でAIを使うときの相談窓口を、次のとおり決めました。
責任者:◯◯(部署名)
代行者:◯◯(部署名)
各部門の窓口:部門ごとに1名(別途お知らせします)
相談してよい内容:
・この情報をAIに入れてよいか迷うとき
・AIの出力が正しいか判断できないとき
・うまくいった指示文を共有したいとき
質問の宛先:◯◯(メールアドレスまたは連絡ツールの部屋)
責任者は業務の一部として、毎週この対応の時間を取ります。
遠慮なく相談してください。
◯◯を自社の名前と宛先に置き換えます。
集まった質問を整理するときの指示文の文例
責任者が、質問と答えを「よくある質問」の形に整えるときの指示文です。
以下は、社内でAIを使うときに出た質問と、私が返した答えです。
同じ内容の質問をまとめて、社員向けの「よくある質問」を作ってください。
条件:
・1問につき、質問は1行、答えは3行以内
・専門用語は使わず、日常の言葉で書く
・答えが人によって変わりそうなものは、最後に「要確認」と付ける
質問と答え:
[質問と答えを1組ずつ書く]
[ ]の部分は、集まった質問と答えに置き換えます。 質問者の名前や取引先名が入っている場合は、「Aさん」「B社」のように伏せてから貼ります。
担当者が辞めたり異動したりしたら、どうなるのか
担当者が1人だけで、記録も残っていないと、抜けた日から窓口が止まります。 止まると、社員は自己流で使い始め、ルールのない状態に戻ります。 次の3つを、担当者を決める時点で用意します。
| 用意するもの | 中身 |
|---|---|
| 代行者 | 責任者と別の部署から1名。ふだんから記録に目を通す |
| 質問と答えの一覧 | 前の見出しの指示文で整えた「よくある質問」。共有フォルダに置く |
| ツールの管理者情報 | ログインIDの管理者を個人の名前にせず、会社のメールアドレスで登録しておく |
担当者への手当や評価に反映するかは、会社ごとに決めます。 常時10人以上の労働者を使う会社は、賃金の決定・計算・支払の方法を就業規則に書く義務があります(労働基準法89条2号)。賃金に関する事項は、就業規則の本体とは別の規程(賃金規程)に定めてもよいと、厚生労働省のモデル就業規則に示されています。手当を新設するなら、自社で賃金を定めている規程に書き加えます。【各自確認:自社の賃金規程への手当の書き方。顧問の社会保険労務士に確認】 金額の目安は、このサイトでは示しません。まず、週の作業枠を業務時間として明示するところから始めます。
よくある質問
専任の担当者を採用したほうがよいですか。 従業員100名以下なら、勧めません。責任者の作業は週3時間ほどの試算で、専任にすると勤務時間の大半が空きます。責任者の作業が週10時間を超えてきたら、専任を考える目安です。
ITに詳しい社員がいません。誰を責任者にすればよいですか。 詳しさは条件ではありません。業務を長く知っていて、周りから相談されている人を選びます。操作は後から覚えられます。
部門長を、そのまま部門の窓口にしてよいですか。 部門長が窓口を兼ねるのは、部門の人数が10名以下の場合に限ります。それより大きいと、部下が「上司に聞きにくい」という理由で質問を止めます。部門の中堅の社員を窓口にするほうが、質問が集まります。
外部の専門家に、担当者を任せてもよいですか。 使い方の相談や研修は外部に頼めます。ただし「何を入力してよいか」の判断と、質問の受付は社内に残します。社内の業務と取引先の情報を知っているのは、社内の人だからです。
責任者を1人にすると、その人に負担が集中しませんか。 週2時間の枠を業務時間として渡していれば、集中しません。枠を渡さずに任せると、本人の残業になります。負担を分けるために、部門窓口と代行者を置きます。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. 従業員100名以下の会社では、AIの担当者は専任にするのが前提である。
× — 責任者の作業は週2〜3時間の試算で、専任の勤務時間は埋まらない。兼任で足りる(本文参照)。
Q2. AIの担当者は、社内でいちばんITに詳しい人から選ぶのが最優先である。
× — 操作は後から覚えられる。業務を知っていて、周りから相談されやすい人を選ぶ(本文参照)。
Q3. 担当者が辞めたり異動したりしたときに備え、責任者の代行を1名決めておく。
○ — 代行と記録があれば、担当者が抜けても質問窓口が止まらない(本文参照)。
御社の仕事のうち、AIに渡せるものを診断します。
いくつかの質問に答えると、AIに任せられる仕事と減らせる時間の目安が出ます。運営: 市瀬 大義(福岡。前職で経営企画室長を経て、執行役員CFO)
無料のAI導入診断を受ける LINEで「相談」と送る

